(二)この世界ごと愛したい




「今からユイ姫さんの親衛隊の方々と一戦交えるんですけど。」


「それが?」


「…事の次第によっては、私ブチ切れる可能性もあるので。そうなったら全力で止めてください。あと、明日トキの進軍の邪魔するから、トキのフォローよろしく。私が怒られないように宥めてください。」


「…条件二つに増えてるんですけど。」



それくらい大目に見てくれよ。けち。




「一つ目は私の忍耐力の問題でもあるし、努力はするけど。二つ目は…うん。割と本気のお願い。」


「大体何でアキト軍の邪魔をわざわざするんですか。均衡を守るって、その都度対処するつもりですか。」


「あー…。シオンには内緒。」


「…分かりました。何とかします。」



じゃあ、私も許しましょう。



私は椅子に座っているシオンの額に自分の額をくっつける。


この熱を測るような動きは、昔よくやっていた私とハルの仲直りの合図。




「仲直りだね?」


「…。(これで手を出せばまた怒られて条件増やされる。軽く拷問だな。)」


「わあ、コーヒーあるじゃん!ラッキー!」



食事と共に置かれたコーヒーに目を奪われて、シオンからすぐに離れた私は有り難くいただく。




「…体温ちょっと高くないです?」


「炎属性だから?それかシオンが低過ぎるんじゃない?」


「炎属性って何。」


「魔法とかであるじゃん?なんか格好良いじゃん?」



私がそう言って笑うと、逆にシオンは呆れたように溜め息を吐いていた。


かなり冷めてしまったコーヒーだけども飲めるだけ有り難いです。



飲みながら、これからの動きを考える。


長考モードに入った私を、シオンは何も言わずに眺めるだけ。



シオンを模倣しただけの私の行動は、一定範囲ではシオンに理解が及ぶのだろう。戦いのスタイルが酷似しているのもそのせい。






「…さて。一宿一飯の恩を返そうかな。」



引き返してくる軍を、この街から退けましょう。