「今からユイ姫さんの親衛隊の方々と一戦交えるんですけど。」
「それが?」
「…事の次第によっては、私ブチ切れる可能性もあるので。そうなったら全力で止めてください。あと、明日トキの進軍の邪魔するから、トキのフォローよろしく。私が怒られないように宥めてください。」
「…条件二つに増えてるんですけど。」
それくらい大目に見てくれよ。けち。
「一つ目は私の忍耐力の問題でもあるし、努力はするけど。二つ目は…うん。割と本気のお願い。」
「大体何でアキト軍の邪魔をわざわざするんですか。均衡を守るって、その都度対処するつもりですか。」
「あー…。シオンには内緒。」
「…分かりました。何とかします。」
じゃあ、私も許しましょう。
私は椅子に座っているシオンの額に自分の額をくっつける。
この熱を測るような動きは、昔よくやっていた私とハルの仲直りの合図。
「仲直りだね?」
「…。(これで手を出せばまた怒られて条件増やされる。軽く拷問だな。)」
「わあ、コーヒーあるじゃん!ラッキー!」
食事と共に置かれたコーヒーに目を奪われて、シオンからすぐに離れた私は有り難くいただく。
「…体温ちょっと高くないです?」
「炎属性だから?それかシオンが低過ぎるんじゃない?」
「炎属性って何。」
「魔法とかであるじゃん?なんか格好良いじゃん?」
私がそう言って笑うと、逆にシオンは呆れたように溜め息を吐いていた。
かなり冷めてしまったコーヒーだけども飲めるだけ有り難いです。
飲みながら、これからの動きを考える。
長考モードに入った私を、シオンは何も言わずに眺めるだけ。
シオンを模倣しただけの私の行動は、一定範囲ではシオンに理解が及ぶのだろう。戦いのスタイルが酷似しているのもそのせい。
「…さて。一宿一飯の恩を返そうかな。」
引き返してくる軍を、この街から退けましょう。

