そして外の人!
何してんのはよ来い!!!
「ちょ…っと…ひぁっ!?」
いつまで経っても訪れてくれない宿の人に理不尽な怒りを募らせる。
そんな私の耳を舐める。
「…真っ赤。」
「う、るさい!離して!次やったら本当にっ…ッ!!!」
本当に怒るからって。
言おうとした私に気付いたシオンが、言葉をわざと遮るように今度は首筋に唇を這わせる。
「やっ…〜っ。」
「次やったら何?」
「そ、こで…っ、喋るのやめてっ。」
「どこまで可愛いわけ?」
首筋に吹きかかる息。
それだけのことなのに、全神経が首に集中してしまっている私には強い刺激になる。
このままでは昨日の二の舞だと焦る私に、ようやくドアを叩く音が届いた。
「っ!し、シオン、お客様っ!」
「…なるほど。それを知って油断してたんですね。」
「そんなこと今はいいから…っ!?」
私の口を手で塞ぎ、シオンの唇はそのまま更に下へと這っていく。
「〜っんッ…ぅ…。」
首筋から、鎖骨へ。
鎖骨から、胸の膨らみまで移動する。
せっかくの助け舟。
宿の人は返事のないドアの前でどうしようかと思い悩んでいるに違いない。しかし、私を姫と認識している手前、勝手にドアを開ける無礼は働けないだろう。
無礼でも何でも許すから助けてくれ!!!
「っはあっ…。」
「何かもうこれ以上やったら、抑制出来る気がしないんで止めます。」
世迷言を涼しく言うシオンを睨みながら乱された服を整える。
こいつマジでどうしてやろうか!?
「姫様、お目覚めでしょうか…?」
痺れを切らした宿主さんの声がドアの向こうから聞こえる。
「っお、起きてます!ちょっと待って!」
絶対顔赤い。
こんな情けない顔で応対しなきゃいけないの。
しかし待たせても悪いので、意を決して私は立ち上がる。
「この邪狼!後で怒るからちょっと待ってなさい!」
私は外套を被っていないシオンを隠すため、布団をガバッと上から被せた。
怒り任せの私の行動が、出会った時の状況と似たところがあり。
布団の中でシオンが嬉しそうに顔を緩めていたことに、私は気付かなかった。

