(二)この世界ごと愛したい




たぶん、いつまで経ってもシオンにも追いつくことなんて出来ないと思う。


ハルと同じで、私の前を威風堂々走る人。



私はいつまでも追いかけ続けることになるんだろうと思う。




「確かに、近付いてみたら分かることもあるかもしれませんけどね。」


「え?」


「やってみます?」



…思い返せばもう充分近いんですけどね。



ここで手を伸ばしたのは、単純な好奇心。そしてほんの少しの正義感。


既に抱き締めていただいている中、危険は承知で私はシオンの銀色に輝く髪に触れる。




「…そうだよね。」


「分かったんですか?」


「んー現状何にも変わらない。でももう私のこと怖がってないなーっていうのは分かった。」



以前はこの髪に触れようとしただけで死に目に遭った。





「そのまま何も怖がらなくていいよ。僭越ながら、絶対に道は拓いてみせるから。」



ユイ姫さんがいつまでもシオンとトキを縛り付けるから、私が天誅を加えて解放する。


二人が自由を求められるようにしてみせる。




「…頭では無理だって分かってるんです。」


「え、私の意気込み無視?」


「…だけど貴女を見てると賭けてみてもいいと思えるのが不思議です。」


「あ、うん。ご自由に。」



そこは本人の自由ですよね。


私は私のやるべきことをやるだけだ。




「ただ、無茶しようとしたら全力で止めます。」


「頑張るね!」


「頑張らなくていいです。」


「トキと同じこと言ってるよー。」



流石兄弟。


兄弟あるあるを指摘したら嫌そうに睨まれましたが。




「まずはユイ姫さんの親衛隊を使って宣戦布告でもしようかなー。」


「何する気ですか。」


「姫としての格の違いを教えてあげるだけ。」



アキト直伝、ニヒルな笑みを浮かべてみる。