たぶん、いつまで経ってもシオンにも追いつくことなんて出来ないと思う。
ハルと同じで、私の前を威風堂々走る人。
私はいつまでも追いかけ続けることになるんだろうと思う。
「確かに、近付いてみたら分かることもあるかもしれませんけどね。」
「え?」
「やってみます?」
…思い返せばもう充分近いんですけどね。
ここで手を伸ばしたのは、単純な好奇心。そしてほんの少しの正義感。
既に抱き締めていただいている中、危険は承知で私はシオンの銀色に輝く髪に触れる。
「…そうだよね。」
「分かったんですか?」
「んー現状何にも変わらない。でももう私のこと怖がってないなーっていうのは分かった。」
以前はこの髪に触れようとしただけで死に目に遭った。
「そのまま何も怖がらなくていいよ。僭越ながら、絶対に道は拓いてみせるから。」
ユイ姫さんがいつまでもシオンとトキを縛り付けるから、私が天誅を加えて解放する。
二人が自由を求められるようにしてみせる。
「…頭では無理だって分かってるんです。」
「え、私の意気込み無視?」
「…だけど貴女を見てると賭けてみてもいいと思えるのが不思議です。」
「あ、うん。ご自由に。」
そこは本人の自由ですよね。
私は私のやるべきことをやるだけだ。
「ただ、無茶しようとしたら全力で止めます。」
「頑張るね!」
「頑張らなくていいです。」
「トキと同じこと言ってるよー。」
流石兄弟。
兄弟あるあるを指摘したら嫌そうに睨まれましたが。
「まずはユイ姫さんの親衛隊を使って宣戦布告でもしようかなー。」
「何する気ですか。」
「姫としての格の違いを教えてあげるだけ。」
アキト直伝、ニヒルな笑みを浮かべてみる。

