王様が頭を悩ませて、病んでしまうのも分かる気がする。
そして私の憧れのシオンが、それを静観して黙認している事実もまた嘆かわしい。
ハルも若干そんな節があるのであまり強く言えないけど、国防の意識が低い。しかしハルは自身が王族なので、より深刻なのはエゼルタだろう。
王族が腐敗すると国そのものが潰れてしまう。
シオンは嫌かもしれないけど、どうにかこの腐敗を止めてはもらえないものだろうかと。
そんな私の偽善者紛いの願いを口に出すわけにはいかないか。
「狼さんは相変わらず、私にしか優しくしてくれないね。」
「……。」
「思い返せば私は昔からずっと考えさせられてる気がするなー。」
「…何の話ですか。」
基本的には戦のことだった。
シオンの策を、その動きを何とか読み取りたいと試行錯誤していたあの頃。
そして、今。
「シオンが何考えてるのか、知りたくて仕方ないの。」
この国の現状を。
王族から崩れていこうとしているこの状態の今、シオンは一体どういう考えに至って捨て置いているのか。
私にとって偉大すぎるこの人を、未だこの国に押し留めるものは何なのか。
「…私も、シオンに近付いたら分かるようになるのかな。」
さっきユイ姫さんとの関係性が浮かび、思わず漏れ出てしまった声。
だって、本当に嫌で国への愛着もないのなら。シオンもトキみたいに国外へ出ることも出来るんじゃないかって思うし。
でも、シオンの考えを知ろうなんて、少し烏滸がましいことなのかもしれない。
「…俺の考え、ね。」
「まだまだ私はシオンには追いつけないね?」
「じゃあ早く追いついて隅々まで全部、ちゃんと読んでください。」
「っ!!」
初めて見る悪戯な笑顔に、思わずたじろぐ。
読んでくださいって面と向かって言われると、何か変な気分だ。

