「…エゼルタの軍総司令について教えてほしい。」
「…今?」
甘い空気を作りたくない私が、今回は機転を利かせて真面目な質問をぶつける。
「今。」
「…前にも言いましたけど、貴女は知らなくて良いです。」
「シオンが話してくれないならカイに聞くけど。」
「…それも厄介だな。」
昨日の軍。
あれはユイ姫直下の軍だと言っていたが、戦についての知識が浅いらしいユイ姫の独断とは思えないし。
シオンが総司令を止めようとしたって言ってたから、あの軍は総司令監修の元、私に放たれた。
そして今。
再びここへ舞い戻ろうとしている気配がある。
「一言で言うなら食えない男。」
「…シオンが言うならよっぽどだねー。」
「貶してます?」
「私にシオンが貶せると思う?」
そんなに尊敬してるのに?
シオンを見てこんなに頑張って来たのに?
抱き締められたままだけど、私は身体を反転させてシオンに向き直る。
「シオンは私の目標なの。」
「…。(良くこの状態でそんなこと言えるな。)」
「だからそんなシオンの上官になる人、気になるんだよねー。」
シオンって無礼だし鬼畜だし、王族であるユイ姫にも臆さないらしいから。
そのシオンを仮にも従えている人。
「結構強い?」
「…昔は戦場にも足を運んでいたらしいですけど。今はほぼ文官に近いです。」
「…シオンより凄い?」
「さあ?」
一応確認してみた。
でも正直なところ、私は軍略においてシオン以上の人をまだ見たことがないので。
この質問の答えは私の中では決まっている…はずだった。
「…ただあの人は一応、俺の師でもあります。」
「っ!?!?」
これは、とんだ大物ではないか。

