冬国であるエゼルタは、秋口でも肌寒い。
あれから眠りについた私は、朝の寒さに身を縮め、寝惚けながらも暖を求める。
すぐ側に感じた温もりに身を寄せる。
「……。」
それは隣で眠っていたシオン。
私が近寄ったことで、無意識にその腕の中へ私を閉じ込めてしまう。
しかし、お互いに大いに寝起きが悪いので。暖が得られた私と、私を捕まえたシオンはこの瞬間だけは利害が一致していた。
ぬくぬくと眠り続け、今日も先に目覚めたのはシオン。
「…?」
きちんと距離を置いて寝たはずが、気付けば私を抱き締めている自分に驚くシオン。
「…ハルの病気が伝染した。」
そんなシオンの嘆きに、私の耳がピクリと反応する。
「はる…?」
「……。」
ハルと聞こえた。そして温かい。
瞼は重くまだ開かないが、それだけで私の頭はハルを想像出来てしまう。
「はるー…。」
いつものように。
よくある日常のように。
私はハルの温もりの方へ腕を伸ばしてしがみ付く。
「…ん?」
…なんか違う。
ハルにしては温度が低い気がするし。ハルよりも細い気がする。何よりハルの音がしない。
不思議に思った私は仕方なく目を開く。
「……。」
「……。」
「……。」
「…ご……ごめんなさいっ!!!」
目と鼻の先で私を見つめるシオンに、恥ずかしい人違いをした謝罪をする。

