「シオンがいない?」


「城にも屋敷にもおりません。」



シオンが見つからないことを報告すると、その綺麗な顔を歪め怒りを露わにするユイ姫。




「…シオンは総司令に呼び戻させて。とにかくアレンデールの落魄れた姫を私の前に連れて来なさい。」


「…あれは策もなく立ち向かえる相手ではありません。」


「私の言うことが聞けないの?」


「滅相もございません。直ちに連れて参ります。」



隊長は頭では無理だと分かっている。


しかしそれをユイ姫が許さないので、再度軍編成を行い私が滞在する街へ向かう準備に取り掛かる。




「街にいるんだったわね。邪魔なら街の人間の犠牲も厭わなくていいわよ。」


「…承知しました。」


「あなた達も、仮に死んだとしても私の願いを叶えなさい。」


「…心得ております。」



傲慢で強欲なお姫様。


自分以外の人間の命に興味もないその様子は、いつものことで。



間違っていると思っても、誰も咎めることも出来ない。



これが、このエゼルタの唯一絶対の姫。





「隊長、本当にあの化け物をまた相手にするんですか!?」


「…姫様の命令だ。仕方あるまい。」


「そうは言ってもあんな化け物相手にどうしろと言うんです!?」


「…虚を突くか。或いは人質に成り得る者を盾にするしかない。」



全滅覚悟であるため、決して気持ちは軽くない。


簡単ではないだろうこの命令を遂行するため、再び軍を発す手配が進んでいた。