「…とりあえずせっかく準備してもらったし、ご飯食べない?」
「…はい。(ここで飯よりあんたが食べたいって言ったら更に離れられるな。)」
「…。(さっさと移動したいけどまずは穏便にご飯食べて。そこから移動する隙を探ろう。)」
水面下で、それぞれ考えを巡らせる。
食事をいただきつつも、黙々と私を逃がさない策を練るシオンと、そんなシオンから逃れたい私。
…果たして勝利の女神はどちらに微笑むのか。
「次、またトキと情報屋行くんで。」
「カイとシオンから隠れる算段話してたのになー。隠れる必要なくなったって言っとくね。トキに会えるのは嬉しい…あ、戦割り込むから怒られるかもしれないのか。」
そうじゃん。
次会ったら私トキのお説教スタート確定じゃん。
「…何で俺から隠れるんですか。」
「…怒られるのが想像出来たから。」
「隠される方がもっと腹立たしいんですけど。」
「だから話したじゃん。しつこい。」
バチバチと火花でも散るような冷戦を早速繰り広げる。
一先ず食べれるだけ食べた私は、頭を働かせてこの宿を抜け出すことに注力する。
「…。(拠点まで少し距離はあるけど、飛べば一瞬だ。次にシオンが油断したら隙を突いて窓から逃げよう。)」
「…。(かなり怒ってるし警戒されてる。気を抜いたらすぐ逃げられそうだな。どうするか。)」
相変わらず隙のない人だ。
お互いに違う方向に警戒しており、このままでは埒があかない。
…仕掛けるしかない。

