弱い私は、いつだってハルに縋るしかない。


ハルだけが私を苦しみから救ってくれることを、嫌と言うほど知っている。




「…最早洗脳に近いな。」



シオンが冷たくそう言うけど。


本当のハルとは。シオンが想像している何万倍も、ただ私を大事にしているだけだと思ってる。




「…じゃ。」



そんなことより私は逃げたい。


溢れんばかりの警戒心を抱いてしまっているので、この場から一秒でも早く消えてしまいたい。





「悪いけど逃がさない。」



私を逃がさんとお得意の縦抱きで抱え上げて、ベッドに戻ってきては包むように抱き締めて離そうともしない。



…ここまで来ると腹立ってきた。




「もうシオンやだ。離して。」


「…すみませんでした。」


「潮らしくしてもだめ。私やっぱり移動します。シオンとは一緒にいない。」


「…怒ってます?」


「怒ってる。」



怒っていると伝えると、反対に抱き締める力を強めるこの鬼畜。




「…もうしない。」


「信じられない。とにかく離して。」


「…あんなに可愛く善がってたのに?」



可愛くないし善がってない!!!


けどきっと、シオンに何を言っても無駄だと判断しました。




「…もういい。」


「とりあえず機嫌直してください。」



カイから聞いた話では、ユイ姫さんと所謂そういう関係らしいシオン。


それはシオンにとっては嫌なことなんだろうと思い、こっちは少しだけ密かに心配していたのに。





『リンにしたことって、シオンがされたら一番嫌なことじゃないの?』



トキの言葉が、ふと過ぎる。


あれが本当ならさっきのは一体何なんだ。