私の身体から力が抜けると、シオンは唇を離す。
「吸って。」
「っはぁっ…もうやめっ、ふ…ぅんッ。」
酸素を与えてもらっても、すぐにまた塞がれる唇。
もうどれくらい続けられたのか分からない。
もう何も考えることが出来ない。
何度も何度も、まるで噛み付いているかのようなシオンは至って涼しそうな顔で。
完全に抵抗する力も失った私の手は知らぬ間に解放されていることにも私は気付けない。
必然的に空いたシオンの手が、私の顔に添えられる。
「…その泣き顔、もっと見たい。」
ようやく纏まった呼吸の時間を与えられても、肩が上がるほど呼吸が乱れた私に、言い返す術はない。
「ッやっ…!」
再びシオンが私に顔を寄せるが、ここまで来ると命の危険も感じてしまった私が無意識に顔を背ける。
さらに自由になった手で何とか拒否の姿勢を示す。
…残念ながら喋るほどの余裕はありません。
「…もう嫌?」
当たり前だろうと頷く。
押し倒したままだった私を引っ張り起こし、もう何度目かの超至近距離でまた見つめ合う体勢。
「じゃあその顔もっと見せて。」
「〜っ!?」
この甘い空気に当てられて抵抗もままならない。内に籠った熱も冷めることを知らない。
この狼が、私を捕らえて離してくれない。
「…大丈夫ですか?」
どうしたらいいのか打開策が浮かばない。
浮かばないと言うか頭が回らない。
「っはる…。」
もう助けてください。
ハルと仲良しのこの人、どうにかしてください。
私じゃ手も足も出ません。

