(二)この世界ごと愛したい





「…やっと。」


「え?」


「誰の邪魔も入らない場所に誘い込めた。」




恐ろしいことを言って。


シオンが未だ至近距離にいる私を抱き上げる。




「っ!?」


「…アキトの城では煩いのが多かったし。外は嫌だって言うし。」



ストンと。


そのままベッドに降ろされた。



降ろされて身体が離れた瞬間、私は渾身のスピードでシオンから距離を取ろうと試みた。



…が。






「もう逃げ場はないけど?」



流石、現役の将軍。


私の動き出しを読んでいたのか、凄まじい反射神経で私はすぐに捕らえられる。



そのままベッドに押し倒され言葉の通り、私に逃げ場はない。





「…パルテノン王都には行くなって言った。」


「…謝ったじゃん。」



この状況に納得いかないこともあり、太々しい私の態度が気に入らなかったのだろう。




「ぅんっ…!?」



逃げ場のない私にキスを落とす。




「反省もしないつもり?」


「〜っ!!!」


「そのせいで俺は無駄に朝から疲れたのに?」


「ちょ、待ッ…っ!」



何度も何度も重ねられる唇。


酸欠になるほどではなく、重ねては離れてを繰り返されるので。


呼吸に余裕はあるがそれが逆に私に考える隙を与えるので、恥ずかしさが優って何も考えられない。




「やめ…っ。」



絶妙に言葉も紡げないテンポで。


とめどなく降り注ぐキスの嵐から、逃げたくて逃げたくて。私は抑えられている手を離してもらおうと力を込める。




「…この程度じゃ反省出来ない?」


「ちがっ…んぅッ!?」



今度はもう考える隙もなくなるほど。


頭が真っ白になるほど。


唇が離れないのに角度を変えながら、長く熱い…そんなキス。




「しぉ…っ…も…。」



息継ぎの間も与えてもらえず。


苦しくて、この熱がもうただ熱くて。



このまま溶けてなくなってしまいそうな、そんな感覚に苛まれる。