宿の中でも一番の部屋だと言う部屋を当てがわれ、食事まで運んでくださり至れり尽くせり。
そんな中しれっと隣にいるシオン。
「お連れ様もアレンデールの方ですか?」
「あー…そうです?」
「では同じお部屋の方がご安心でしょうか?」
「別にしてください!!!」
何の嫌がらせだ!?
同室になんてしてみろ!?この狼に私は食べられる危険が生じるぞ!?
「姫様のご所望ならばいくつでも部屋はご用意いたします。」
「だからもう姫じゃなっ…い!?」
大人しくしていたシオンが、ここで動く。
私に用意された部屋で、食事が広げられた状態にも関わらず。さらに宿主さんの目の前にも関わらず。
…私にその整った顔を寄せる。
「同室で構いません。姫に何かあった時、すぐ対応出来る方が良いので。」
「何言って…っ!?」
勝手なことを言うシオンに言い返そうとした私を、この近すぎる距離のまま睨む。
「それは確かに!姫様に危険があってはいけません!ではどうぞごゆっくりお寛ぎください!」
そう言って、今この瞬間私を危険に晒したことにも気付かない宿主が退室。
お願いだから戻って来てくれ!!!
「……。」
「……。」
どうする。
私は最悪カイの拠点である場所に泊まって良いと言われているので野宿は免れる。
そっとここを出ればそれで済むのに。
この狼から免れる方法が、浮かばない。

