(二)この世界ごと愛したい




そう考えながら、街へ一歩。


足を踏み入れると。



逃げ惑う街の人、それを蹴散らすように進軍を続ける兵士達。




…何だこれは。




「おやめください!」


「誰かーっ!!!」


「火の手が上がった!水を運べー!!」



これは誘い込み。


完全に私を誘き出そうとしている。挑発されている。




「やな感じだなー。」



この街はエゼルタの街。


やって来たのはエゼルタ軍。こんな横柄な態度で進軍しているが自国の軍。



…うん。この軍の人嫌いだ。




「もしもーし。お探しものは私ですー?」



軍の前に隠れもせず立って、声を掛ける。


訳の分からない街への攻撃をやめてもらわないと、胸糞悪くて全員黒焦げにしちゃいそう。




「アレンデールの魔女。思いの外早く見つかったな。」


「あなたが隊長さん?私に用?」


「お前を捕らえる。」



うんうん。


それが出来ると思ってるのが片腹痛い。




「これっぽっちで?私を捕えるって?本当に出来ると思ってるならエゼルタの軍部は馬鹿なの?」


「何だと。」



眉間に皺を寄せている隊長さんだが。


残念ながら私の方が怒っています。私一人に的を絞れば良かったものを。街の方まで巻き込んで。




「百聞は一見にしかず。」



私は街を不燃の炎で包み込む。


それを街を燃やさんと軍が放った炎ごと覆い、一瞬で全ての炎を消し去る。



パルテノンでの火事も、本来こうしたかったんですよ。そしたらこうも一瞬だったんですよ。




「…さて。こんな感じで一瞬で片は付くけど、どうする?」


「っ!!!」


「出直すならこのまま帰してあげるけど?」


「…これ程までに馬鹿げた力とは。」



馬鹿とは失礼な。


この軍ほど馬鹿ではないと思ってますけど。