「総司令さんとユイ姫さんは、私を舐めてるんですかねー?」
「…充分気合いの入った数ですけど。」
「たった五千強で?私を捕まえられるって?シオンもそう思うの?」
「…俺が今本気で貴女を捕まえようと思うなら、まず軍は動かしませんね。俺一人で充分です。」
「やなこと言うなー。」
確かにシオンの気配は読みにくいから、ギリギリまで気付けない。
それにこの人のスピードと強さ。
…反撃出来ないしすぐ捕まりそう。
「それに、嫌なんですよね。」
「え?」
シオンが不意にまた、私を抱き締める。
「俺以外の誰かに、あんたが捕まるの。」
「っ〜!!」
「今夜は俺が捕まえとく。」
「はあっ!?」
こ、今夜ってなに!?
シオン家に帰らないの!?
「擦り傷一つでもしようもんなら、朝まで寝かさないから。」
…冗談じゃない。
ここは何が何でも無傷で通らねばならない道だ。
そう決心した私の耳に、街の方から悲鳴が聞こえた。
恐らく私を追う軍が到着した様子。
「絶対怪我なんかしない!」
「そうしてください。」
「じゃあ行ってくるから!シオンも見つからないようにねっ!」
「…はいはい。」
私はシオンから離れ、再び街へ向かう。
悲鳴が聞こえたのが気になったけど、ここはエゼルタ。この軍はエゼルタ軍。
自国の街に、そんな横暴なことはしないだろう。

