(二)この世界ごと愛したい





「…ハルは太陽だから。ハルの戦が近い時は基本晴れるよー。」


「あれが太陽?」


「アキトとトキはハルの戦、観戦に行くんだってー。」


「へえ。」



特に興味もないのか、シオンもまた横になって。


当たらず触らずの距離。当然ですが。




「…何かこの国は少し空気が乾いてるね。」


「冬国なんで。」


「そっかー。じゃあこれくらいの時期に来といて良かった。私寒い時の天気予報苦手なんだよねー。」



エゼルタは冬国。


確かに山が多い。つまり盆地が多いので、かなり厳しい冬なんでしょう。




「寒いの苦手ですか?」


「得意ではない。暑さの方が慣れてるからまだマシかなー。」



炎属性なので。




「俺とは真逆ですね。」


「そう言えば暑いの苦手そうだったねー。」



ようやくシオンが落ち着いて、私も疲れた身体を休ませているそんな時。


私のレーダーが反応を示す。





「…この軍は誰が差し向けたのかな?」


「…総司令。」


「なーんだ。王様じゃないのかー。」



もう近くまで来てしまっていますね。


エゼルタ王はこんなことはしないだろうと、勝手に何となく思っていますが。



…総司令さんにも会ってみたいな。





「逃げてはくれませんよね。」


「そうだねー。これは王様にアピールするチャンスだからねー。」


「…トキのためにそこまでするんですね。」


「何からでも守ってあげるってトキに大口叩いて来ちゃったし。それに…。」




エゼルタのお姫様。


シオンとトキを縛り付けている許し難い人。



たぶん、今日シオンが元気ないのもその人のせいな気がするし。





「それに?」


「…狼さんが落ち込んでるのが癪なので、一泡吹かせてやります。」


「は?」


「都合悪いなら上手に隠れててよ?」



カイの話じゃ、政権はほとんどユイ姫が握っているらしいから。


軍事関係にその手が及んでいてもおかしくはない。



おかしくはないなら、叩き潰してあげよう。