(二)この世界ごと愛したい




ああ言えばこう言う!!!


鬼畜は健在か!!!




「はーなーしーてー!!!」


「…元気ですね。」



最初から私は元気でしたもの!元気ないのはシオンだけだったんですもん!




「ちょっとほんとにっ…!」



本格的に外で何してんだって恥ずかしくなってきた。


だから、頑張って力を込めて起き上がろうと踠いているが。シオンは離してくれない。それどころか。





「キスでもする?」


「何言ってんのっ!?」



このままでは危険です。


どうしようかと考えて、距離を置こうと引けば引くほど近付かれる。



なら、逆に押してみるか…?




「…へえ?」


「…失策失策。し、失礼しました。」



引いてもダメなら押してみろ作戦。


逆に私からシオンに引っ付いている形になったものの、一概に失策とも言えないかもしれない。



不意を突かれたシオンの力が、若干緩んだ。




「っよし、脱出成功っ!!」



一瞬の隙。


シオンから再び距離を取ることが出来た私。転がったままのシオンへしてやったりと笑みが溢れる。






「…良い作戦だったんじゃない?」


「えっ、褒めッん…!?」



シオンに褒められたと。


また追加で喜ぶ私の頭を引き寄せて、いつの間にか起き上がったシオンが唇を重ねる。




「…顔赤いけど。」


「だっ、誰のせいで…!!!」



ケロッと悪びれもなく離れたシオン。


褒められて嬉しかったのに!憧れの人に良い作戦だって言ってもらえたのに!喜びをもっと噛み締めたかった!!!




「もうちょっと癒して。」


「そんな力は持ち合わせてませんっ!」



また転がったシオンを見て、寝るなり帰るなり好きにしろと思った。




「…今の空気で、天気分かります?」


「…しばらく崩れたりしないよ。晴れ模様です。」



急に天候の話に切り替わり、大いに取り乱されてるこっちがアホらしくなってきた。


気にしたら負けだと思った私も、疲れてその場にごろんと転がる。