「ねえねえ。」
「…はい。」
「ちょっと出掛けてもいいー?」
「…良い加減にして。」
街は落ち着いただろうかと。
様子を見に行こうと思って提案したら、何故だかまた不機嫌になったシオン。
もうやだよー。この人ずっと機嫌悪いよー。トキさん助けてくださいー。
「…っうわ!?」
心の中で嘆く私の腕を不意にグイッと引き寄せられたもので、横になっているシオンに思いっきりダイブしてしまった。
「ご、ごめっ…!」
思いっきり押し潰してしまってるので、私は慌てて飛び退こうと動いたのに。
それを止められて。
外套の隙間から、今日初めてシオンと目が合った。
「…何でさっきから離れようとしてるわけ?」
「さっきからっていつから!?とにかく今は離してよ!?」
「…あの女の匂いがするの嫌?」
「は、はあっ?」
嫌なのはあなたでしょうが!!!
私まで勝手に巻き込まないでください!!!
「…シオン。」
「ん?」
「近い。」
「…あー、なるほど。」
なるほど?とは???
「何?」
「…今目の前にいるの、あんただったね。」
「え?」
それは、今シオンの前にいるのがユイ姫ではなく私だと。
改めて認識したシオン。
男慣れしてない私が狼狽えないのは、私ではない誰かを見ている時だと思い出したから。
「全面的に俺が悪かった。」
「いっ…いや?何か空気変わったから本当に離してっ!」
「もうちょっと。」
「〜っ!」
私の身体を固定している、腰に回された腕に更に力が加わるのが分かる。
全面的に悪いと言った後から、シオンから溢れ出る雰囲気が甘い。
「ここ外なんですけど!?」
「中なら良いってこと?」
「誰かに見られたら嫌だってことですが!?」
「見られなきゃ良いってこと?」

