(二)この世界ごと愛したい




別に無言なのが苦痛なわけではない。


けど、何だろう。



私はいつも通りだ。どちらかと言えば、シオンの空気感が変で。



それに気付いても、私はどうすべきかが分からない。




「…あの。」


「うん?」


「…なんか元気ないです?」



こっちの台詞です!!!




「…私は元気ですけど。」


「そうですか。」


「シオンの方が元気なくない?」


「…そう見えます?」



見えます。


外套でほとんど何も見えませんが。


呆れ返ってるような、少し怒ってるような、嫌なことがあったような。決して元気ではなさそうに見えます。




「お姫様と何かあった?」


「…何で?」


「…ちょっとだけ、香水の匂いが…する。」



実はここへ来る前にもユイ姫の呼び出しを受けていたシオン。


流石に真昼間なので行為はなかったものの、抱き付かれて嫌な思いをして来た後だった。




「香水…か。」


「…え。」



シオンが何を思ったのか私に近付いて、私の首筋に顔を寄せる。




「な、何っ!?」


「…これは何の香水?」


「何も付けてません。ごめんなさい。」


「…へえ。」



すぐに私から離れたシオンは、私を凝視。




「なんなの。」


「…やっぱあの女と違って、良い匂いだと思って。」


「だから何も付けてないって。」



女性らしい香水なんて知らない。


持ってないし、付けたこともない。





「…それで、どうします?」


「私はとりあえずまだこの辺にいるし、シオンはお家に帰るー?」


「…相変わらず腹立つ。」


「なんで!?」