(二)この世界ごと愛したい





「あのアホお嬢っ…。」


「もう可愛いが溢れ返っとるな。二人で真っ赤になって何やねん。俺もときめきたいわ。」


「あー、もうしんどい…。」



その場に蹲り丸くなるおーちゃん。


この仕草もまた可愛いんですよ。カイも同意見なのでその姿を見て笑う。




「…お嬢はほんま凄いわ。」


「はー?」


「オウスケのトラウマを、逆に心奪って行ってしもたやん。」


「…奪われてへん。」



頑なに気持ちを否定し続ける。


おーちゃんは認めるわけにはいかないようです。




「その歳で素直じゃないとか、許されんのお前くらいやで。」


「…どこまでも便利な顔やな。」



それはもう認めてるのも同じような返事だとも気付かず、おーちゃんは立ち上がる。





「お嬢いつ帰ってくるやろ。」


「…三日はかかるやろな。」


「それで無傷宣言か。ほんま神やな。」


「オウスケ、お前もっと人の話聞けや。戦は移動含めて半日も参加せーへん言うてたやろ。残りは白狼との逢引きや。」




「…逢引きっ!?!?」




つまり、デートだと。


身に覚えのない解釈をされていたことに私は気付きませんでした。ただの天気予報のつもりでした。




「とは言っても、その気があるんは白狼だけ。お嬢は単に新たな土地が楽しみっぽいだけやろうけど。」


「は、白狼…でも白狼は、あれやな。女嫌いで有名やし。好かれてる言うたって…なあ?」


「…相手お嬢やで。普通なら場所問わず外でも押し倒して好き放題してまうわ。」


「それはカイの話やろ!?」



カイはニヤリと笑うだけ。


これがエロ親父の真骨頂です。




「やから、オウスケ慢心すなよ。」


「誰が慢心すんねん。」


「あの子は世界を虜にする子やで。本人が望んでなくても、重力みたいに惹き寄せていく。欲しいなら欲しいって意思表示せな、お嬢は無情に飛んで行ってしまうで。」



人のことを好き勝手に言ってくれているカイ。


おーちゃんはそれを聞いて不機嫌丸出しで膨れる。これもまた愛らしいだけ。





「…俺のこと、守るって言うたし。」


「やからちゃんと捕まえときって話やろ。膨れるな、ウサギみたいな顔しよって。」


「ウサギちゃうっ!」



こうして私がいなくなった後も、この酒場は平和に穏やかな空気が流れていました。


エゼルタからの刺客の件もあるので油断は出来ませんが、おーちゃんが近くにいるのできっとカイは大丈夫でしょう。