「あのアホお嬢っ…。」
「もう可愛いが溢れ返っとるな。二人で真っ赤になって何やねん。俺もときめきたいわ。」
「あー、もうしんどい…。」
その場に蹲り丸くなるおーちゃん。
この仕草もまた可愛いんですよ。カイも同意見なのでその姿を見て笑う。
「…お嬢はほんま凄いわ。」
「はー?」
「オウスケのトラウマを、逆に心奪って行ってしもたやん。」
「…奪われてへん。」
頑なに気持ちを否定し続ける。
おーちゃんは認めるわけにはいかないようです。
「その歳で素直じゃないとか、許されんのお前くらいやで。」
「…どこまでも便利な顔やな。」
それはもう認めてるのも同じような返事だとも気付かず、おーちゃんは立ち上がる。
「お嬢いつ帰ってくるやろ。」
「…三日はかかるやろな。」
「それで無傷宣言か。ほんま神やな。」
「オウスケ、お前もっと人の話聞けや。戦は移動含めて半日も参加せーへん言うてたやろ。残りは白狼との逢引きや。」
「…逢引きっ!?!?」
つまり、デートだと。
身に覚えのない解釈をされていたことに私は気付きませんでした。ただの天気予報のつもりでした。
「とは言っても、その気があるんは白狼だけ。お嬢は単に新たな土地が楽しみっぽいだけやろうけど。」
「は、白狼…でも白狼は、あれやな。女嫌いで有名やし。好かれてる言うたって…なあ?」
「…相手お嬢やで。普通なら場所問わず外でも押し倒して好き放題してまうわ。」
「それはカイの話やろ!?」
カイはニヤリと笑うだけ。
これがエロ親父の真骨頂です。
「やから、オウスケ慢心すなよ。」
「誰が慢心すんねん。」
「あの子は世界を虜にする子やで。本人が望んでなくても、重力みたいに惹き寄せていく。欲しいなら欲しいって意思表示せな、お嬢は無情に飛んで行ってしまうで。」
人のことを好き勝手に言ってくれているカイ。
おーちゃんはそれを聞いて不機嫌丸出しで膨れる。これもまた愛らしいだけ。
「…俺のこと、守るって言うたし。」
「やからちゃんと捕まえときって話やろ。膨れるな、ウサギみたいな顔しよって。」
「ウサギちゃうっ!」
こうして私がいなくなった後も、この酒場は平和に穏やかな空気が流れていました。
エゼルタからの刺客の件もあるので油断は出来ませんが、おーちゃんが近くにいるのできっとカイは大丈夫でしょう。

