(二)この世界ごと愛したい




ヒマリさんは戦死したと聞いた。


つまり戦で命を落とした。



戦国の常。それは仕方ないことだと私なら思うし、パパの時同様、どうやって仇を討つかをまず考える。



でも優しいおーちゃんは、きっと仇討ち何てしない。だからヒマリさんを失って、そのまま悲しみの渦中にいるしかない。




「っな、なんや!?」



私は戸惑うおーちゃんの手をぎゅっと握り締める。




「……。」


「お…お嬢?どうした?」


「…浮かばないな。」


「は?」



気の利いたことを言ってあげたいけど、特に何も浮かばなかった。


けど、どうにか伝わってほしい。



ヒマリさんは戻れなかったのかもしれないけど。私は負けないし、必ず戻って来る。





「…笑ってほしい。」


「おかしなったん?」


「おーちゃんの感受性って結構周りに影響するんだよー。そんな顔されてたら置いていけないじゃん。」


「ど、どんな顔や!?」



そんな今にも泣きそうな悲しそうな切なそうな顔だよ!!!




「深い意味はないけど私はおーちゃんの笑った顔が好きですっ!深い意味はないけどっ!!!」


「っ〜、に、二回言うなや!!!」


「大事なことなのでっ!!!」



声を大にして深い意味はないと伝えたにも関わらず、真っ赤な顔のおーちゃん。


可愛すぎるんですって!!!





「…ほんま…アホやなあ。」



はにかんだその笑顔が、もう何とも言えない。




「〜っ…。」


「お二人さーん。俺もおるんやけどー。」


「っか、カイ…おーちゃんよろしくね!私行ってきますー!」



自分で笑ってほしいと頼んでおいて、いざ目の当たりにすると照れてしまう自分が憎い。


こんな状況から逃げるように馬車に乗り込んだ私を、御者さんが微笑ましそうに思いながら馬を走らせた。