ヒマリさんは戦死したと聞いた。
つまり戦で命を落とした。
戦国の常。それは仕方ないことだと私なら思うし、パパの時同様、どうやって仇を討つかをまず考える。
でも優しいおーちゃんは、きっと仇討ち何てしない。だからヒマリさんを失って、そのまま悲しみの渦中にいるしかない。
「っな、なんや!?」
私は戸惑うおーちゃんの手をぎゅっと握り締める。
「……。」
「お…お嬢?どうした?」
「…浮かばないな。」
「は?」
気の利いたことを言ってあげたいけど、特に何も浮かばなかった。
けど、どうにか伝わってほしい。
ヒマリさんは戻れなかったのかもしれないけど。私は負けないし、必ず戻って来る。
「…笑ってほしい。」
「おかしなったん?」
「おーちゃんの感受性って結構周りに影響するんだよー。そんな顔されてたら置いていけないじゃん。」
「ど、どんな顔や!?」
そんな今にも泣きそうな悲しそうな切なそうな顔だよ!!!
「深い意味はないけど私はおーちゃんの笑った顔が好きですっ!深い意味はないけどっ!!!」
「っ〜、に、二回言うなや!!!」
「大事なことなのでっ!!!」
声を大にして深い意味はないと伝えたにも関わらず、真っ赤な顔のおーちゃん。
可愛すぎるんですって!!!
「…ほんま…アホやなあ。」
はにかんだその笑顔が、もう何とも言えない。
「〜っ…。」
「お二人さーん。俺もおるんやけどー。」
「っか、カイ…おーちゃんよろしくね!私行ってきますー!」
自分で笑ってほしいと頼んでおいて、いざ目の当たりにすると照れてしまう自分が憎い。
こんな状況から逃げるように馬車に乗り込んだ私を、御者さんが微笑ましそうに思いながら馬を走らせた。

