パルテノンにあるカイの酒場にて。
私は本日エゼルタの街でシオンと天気予報をする予定です。
クロがシオンからの『可』と書かれた返事を届けてくれたので、現在滞りなく支度をしています。
安定してワカさんが来てくれたが、今日は逆に変装する必要はなく。寧ろ私だと分かるように髪型しか触れないと知って若干不服そうである。
「あーあ。リンちゃんのためにせっかく新しい服も新調したのに。」
「ご、ごめんね?」
「後の楽しみに取っとくことにするわね。」
とりあえず髪型は一つに束ねてもらって、私が唯一持参している髪飾りを刺しただけのシンプルなもの。
服も来た時の物にしようと思ったが、ワカさんがあまりに落ち込んでいたので服は仕立ててもらうことにしました。
出来るだけ動きやすくて帯剣しやすい服。
「…気を付けてね?」
「うん、大丈夫だよー。」
支度を終えて、私は下の階に降りる。
安定してカイとおーちゃんがそれぞれ私を見ているんだけど。この待ち構えられる感じ、いつまで続くんだろうか。
「お嬢は相変わらず可愛えな。」
「今日はいつもとそう変わらないでしょー?」
「いや、このシンプルさがまたお嬢の素質を生かしてんねん。」
…じゃあいつも何もしない方が良くない?
「御者さんもう来てる?」
「来てるで。お嬢、慎ましく派手に頼むな。」
「難しい注文だなー。」
要するにわざとらしくない程度に人目を引けってことなんだろうけど。
シオンに迷惑かからないといいな。
「私は次の仕事あるから行くわね。オウスケ、早くリンちゃんに声掛けなさいよ。」
「う、うっさいわ!」
ワカさんとおーちゃんが小競り合いして、ワカさんは忙しそうに去って行く。忙しいのにこんなことに付き合わせて申し訳ない。

