出来るだけ足早にこの部屋を出ようとするのはいつものこと。


ユイ姫は特段何も感じてはいない。




「…アレンデールの王子なら、気にならんでもないんだけど。」


「……。」


「とりあえず今度のパーティーの招待状は出したんだけど、来てくれるかしら。」


「…来るわけない。」



それは私も同感。


ハルはパーティーなんて好んで出席はしない。




「結婚する噂もあったけど、一向に婚儀の沙汰はないのよね。どうなってるのかしら。」


「……。」



一糸纏わぬ姿で恥じることなくベッドに横たわったままのユイ姫。


昨今の女性は本当に肝が座っている。




「あ、次の会合は絶対にトキを連れて来るようにね。次逆らったら二人とも城に閉じ込めるから。」


「…相変わらず嫌な女。」


「光栄でしょう。」



シオンは不快そうに顔を歪め、また特に何も言葉も発することなく姫の部屋を退室。




「…またトキの機嫌が悪くなるな。」



シオンの悩みは様々で。


しかし、今一番の悩みはやっぱり群を抜いて私のことらしい。




「……。(明後日にはエゼルタに来る。彼女を隠すか俺が隠れるか。糞親父にバレた以上俺と彼女が一緒にいる事が公になるのはマズい。どうする。)」



悶々と悩みながら、再び自宅に戻ったシオン。


悩みながらもこの日は眠ってしまい、睡眠大好きな狼さんはこうして考えが纏まらぬまま。



私がエゼルタに現れる日を迎えてしまう。