ユイ姫の色香にも動じないシオン。


しかし、これは逃れられないことだと言うことを理解している。いつものことだと割り切っている。



だからシオンはユイ姫をそのままベッドへ運ぶ。




「シオン、出先で何かあったの?」


「……。」


「やけに機嫌が良いみたい。」


「…あんまり喋るな。萎える。」



失礼も無礼も超過した物言いだが、ユイ姫はそれをまた色っぽく笑う。



ユイ姫の首筋に顔を寄せたシオンは思わず顔を顰め、動きを止める。





「…香水臭。」


「あら、変えてないけど?」



シオンの頭に、あの日このユイ姫に重ねた私が過ぎる。




「…やっぱ全然違うな。」


「なに…っン。」



シオンが思わず漏らした言葉に疑問を持ったユイ姫。


その言葉を遮るようにキスを落としたシオンは、そのまま流れ作業のように行為を遂行。



愛も熱もないシオンに、気付いているのか気付いてないのか。


はたまた、気付いていて敢えて縛っているのか。





「…シオンッ…。」


「……。」



きっとユイ姫にも愛情などないことを、シオンは知っている。


あるのはただの独占欲。



将軍として映えある栄華を飾るシオンを手中に収めているという事実に酔いしれているだけ。







「…今日はもう帰っていいわよ。」



その行為が終わると冷たく言い放つユイ姫。




「これから総司令と打合せだから。例のアレンデールの落魄れた姫についてね。」


「……。」



落魄れたとは酷い言われようだが。


どうやら軍総司令と、私を捕える算段を話し合う予定のユイ姫。




「私はあんなのに興味ないんだけど。どうも総司令が拘るのよね。」


「……。」


「シオンはどう思う?あの魔女、役に立つと思う?」


「…さあ?」



脱ぎ捨てた服を再度身に纏いながら、シオンは適当な返事をする。


私との関係を、悟られるわけにはいかないと。