シオンはちゃんと城へ到着。
それに安堵した使いの者は姫の元へ、シオンを案内する。
「姫様、お待たせいたしました。」
ユイ姫の部屋と思われる煌びやかな装飾がされた美しい部屋。
「…シオン。」
「……。」
姫が話しかけていると言うのに、涼しい顔でしれっと無視するシオン。
使いの者は怯えながら退室。
部屋にはユイ姫とシオンだけが残る。
「トキはまた逃げたの?」
「…伝達漏れ。俺が伝え損ねた。」
「ふざけてるの?」
「だったら?」
ユイ姫。
綺麗な服、綺麗な化粧、綺麗な髪。
その姿は正に正真正銘、煌びやかな王族そのものを現す。
「私を怒らせて、良いことがあったかしら?」
「……。」
「素直にここに来たってことは、多少悪かったと思ってるのよね?」
「……。」
無視を貫く無礼なシオンだが、どうやらいつものことのようでユイ姫も動じない。
立ち上がり、大人の色香を醸し出しながらユイ姫がシオンの首に手を回す。
「ねえ、シオン。」
「……。」
「どれだけ逃れようと抗っても、シオンもトキも私の物なのよ?」
「…そんな覚えないけど。」
「現に逆らえないでしょ?私に逆らうとこの国の人間は生きることさえ出来ないものね?」
もう度を超えているこの姫の権力。
それ程までに権力を持ってしまっている理由は、やはり王位継承問題にある。
現エゼルタ王の時代が崩御すれば、恐らく次に王座に座るのはこの姫。
「私の犬になれる気分はどう?」
「…死んだ方がマシ。」
「大丈夫よ。狼は意外と家族思いの生き物。シオンは結局、トキを見捨てられない。」
「トキは図太いから案外大丈夫だ。」

