(二)この世界ごと愛したい




シオンはちゃんと城へ到着。


それに安堵した使いの者は姫の元へ、シオンを案内する。





「姫様、お待たせいたしました。」



ユイ姫の部屋と思われる煌びやかな装飾がされた美しい部屋。




「…シオン。」


「……。」



姫が話しかけていると言うのに、涼しい顔でしれっと無視するシオン。


使いの者は怯えながら退室。



部屋にはユイ姫とシオンだけが残る。




「トキはまた逃げたの?」


「…伝達漏れ。俺が伝え損ねた。」


「ふざけてるの?」


「だったら?」



ユイ姫。


綺麗な服、綺麗な化粧、綺麗な髪。



その姿は正に正真正銘、煌びやかな王族そのものを現す。




「私を怒らせて、良いことがあったかしら?」


「……。」


「素直にここに来たってことは、多少悪かったと思ってるのよね?」


「……。」



無視を貫く無礼なシオンだが、どうやらいつものことのようでユイ姫も動じない。



立ち上がり、大人の色香を醸し出しながらユイ姫がシオンの首に手を回す。




「ねえ、シオン。」


「……。」


「どれだけ逃れようと抗っても、シオンもトキも私の物なのよ?」


「…そんな覚えないけど。」


「現に逆らえないでしょ?私に逆らうとこの国の人間は生きることさえ出来ないものね?」



もう度を超えているこの姫の権力。


それ程までに権力を持ってしまっている理由は、やはり王位継承問題にある。



現エゼルタ王の時代が崩御すれば、恐らく次に王座に座るのはこの姫。





「私の犬になれる気分はどう?」


「…死んだ方がマシ。」


「大丈夫よ。狼は意外と家族思いの生き物。シオンは結局、トキを見捨てられない。」


「トキは図太いから案外大丈夫だ。」