自室にて、シオンはクロが持って来た手紙に目を向ける。


名前を書いていないことは及第点だが、場所と日にちが書いてあることに頭を悩ませる。



あのお父様にこの情報が渡ってしまったことを憂いているらしい。




「…どうするか。」



私からの天気予報の誘いだと言うことは分かっている。


誘い自体の答えは決まっているものの、どうやって私と会うことを隠そうか考えている。



一先ず予想通り『可』の一文字を添えてクロを窓から放したシオン。





「…厄介な人だ。」



そう呟く割に、その表情は優しい。



こうして自室で優雅に過ごしているシオンの元へ、城から使いの者がやってくる。





「シオン将軍、姫様がお呼びです。城へ同行願えますか。」


「…断る。」


「せ、先日の…トキ様との会合が開かれなかったことに対して大変お怒りで…。」



私をアキトの城から拝借するため、トキとユイ姫の会合を開催させないようにしたシオンへの当てつけの呼び出し。


シオンは溜め息を吐いて、重い腰を上げる。




「…退け。」



使いの者を押し退け、ご機嫌斜めなシオンは城へ向かうことになった。



使いの者も後ろから着いていくが、これは恐らく逃げられないように考えてのことだろう。