「やけに頑なだね。昔、アレンデール城で出会った時のこと思い出して情が入ってる?」
「……。」
「だってらしくないよ。あの子のことになるとシオン全然らしくない。」
「…もう勝手にしろ。」
これ以上、何か勘付かれるのが嫌だったシオンは再び足を進める。
その背中に、また声を掛けるこの人。
「もしかして惚れちゃった?」
「……。」
「だとしたら嬉しいな。シオンが魔女をモノにすれば、必然的にあの力が手に入るし。」
「…黙れ。」
「あ、また怒らせちゃった。シオンが女の子好きになるわけないよねー。」
私といる時、あれほど流暢にいらないことまで話していたように見えたが。
シオンの口数の少なさは実際これくらいだと私も思っていた。だから良く喋るようになったと感じていた。
「くだらない。」
「…たまには一緒に食事でもどう?」
懲りずにシオンに絡み続ける男性に。
シオンがクロを肩に乗せたままようやく振り返る。
「…また別の女の匂いがするけど。」
「今回は一段と綺麗な子だよ。」
「ならわざわざ話し掛けるな、糞親父。」
いよいよ部屋に閉じこもったシオン。
どうやら会話をしていたのはシオンとトキのお父様のようで。
トキから昔の話を聞いた感じ、節操無く女性大好きなお父様は今も変わりなく。
「…息子たちに母親を与えたいだけなんだけどなー。」
親の心子知らず。
しかし、子の心もまた親は知らず。
決して良くはなさそうな親子関係だが、改善される日は果たして来るのでしょうか。

