アレンデールにて。


クロが私の手紙を無事に運んでくれた時。




「ピー。」


「あ?何だこの鳥?」



アレンデール城で、仕事に追われているハルの元へちゃんと行き着いたクロ。


優秀すぎて言葉も出ません。




「…ん?手紙…リンの匂いだ。」



驚くべきその嗅覚で、すぐに私からの鷹だと気付き手紙を手に取ったハル。


それを近くで見ていたるうが声を掛ける。




「ハル、どうした?」


「リンから。」


「あー、クロがどうとかってこの鳥のことか。」


「……。」


「何て書いてんだ?」



手紙を読むハルがとても暗い表情なので、心配になるるう。




「…短え!!!」


「…内容を聞いてんだよ。」



淡泊な手紙が気に入らなかっただけらしい。




「戦、天気は心配いらねえって。終わったら裏山で待ってるって。」


「充分じゃねえか。」


「もっとあるだろ!?元気かどうかとか会いたいとかあるだろ!?」


「…相手リンだぞ。」



読みながら項垂れるハルをるうが宥める。


クロは白い翼を再び羽ばたかせ、アレンデールからパルテノンに向けて飛び立つ。




「あ、これもしかして返事書いたら届けてもらえたのか?」


「もう遅えよ。飛んでったぞ。」


「待てコラ鳥ー!戻って来い!!!」



ハルの叫びも顧みず、クロは遥か彼方へ。



諦めたハルはまた手紙を見て、少しだけ口角を上げる。






「…桜の日、か。」



私の誕生日。


アレンデールの冬は割と早く終わることが多いので、桜が咲く時期が他国より少し早いらしい。





「勝つのは当然。不戦期間にはいつも通り戻って来ねえとな。」


「じゃあ俺の出る幕はねえな。」


「当たり前だ。元からこっちはそのつもりなんだよ。」


「だろうな。俺まで出払ったらいよいよリンが無謀な守備し兼ねねえし。」