何の迷いもなく。


何の躊躇いもなく。



きっと、ハルを追いかけてしまう。




「ハルのいない世界に興味ないから。」


「…そら、アレンデール勝利は固いな。ソルに勝ち目はないわ。」


「私は出来損ないの妹だからねー。」


「もう妹の域超えてるけどな。」



世知辛いこと言いますね、カイさん。




「…あ、シオンに手紙書くの忘れてた。」


「お嬢に恋する男共、全員不憫に思えてくるわ。」


「だから片っ端から断り続けてるんだよー。私を好きになっても良いことないよって、これでもちゃんと伝えてるんだよー?」



それにも関わらず、人は人を好きになってしまうと言うんだから。


ある意味、恋とは恐ろしいものだ。





「…お嬢っ!」


「うわっ、急にどうしたのおーちゃん。」



シオンへの手紙を書くために持ったペンを思わず落としてしまいそうになるくらい、勢い良く声を掛けられた。






「俺、鬼人に負けへんから。」



「…はい?」



突然、何を言い出すかと思えば。





「鬼人が仮に討たれても、お嬢は絶対死なさへん。泣かれても嫌がられても、絶対死なさへん。」


「…う、うん?」


「鬼人だけが全てとちゃうって、分かるまで教え続ける。」



嬉しいよ?


素直にそう思ってくれるのは嬉しいけど、実際のところはたぶん難しいだろうなと思う。




「…頑張れ?」


「かっ、軽すぎひん!?」


「だってその時になってみなきゃ分かんないし。どうせハルは負けないんだってー。」


「やっぱ可愛くない女やな!?」



うるさいおーちゃんは一旦置いて。


私は再びペンを走らせることにしました。



シオンに、天気予報のお誘いの手紙。




そこには行き先である街の名前と、大まかな滞在期間を書いただけの事務連絡のような手紙。


シオンへの手紙はご実家に届いてしまうので、不在だった場合でも差し支えないよう配慮したらこうなってしまう。



誰に見られても、私からだと悟られないように。