『天候の憂いはないので準備が整い次第進軍を。終戦後、桜の日にいつもの場所で待ってるね。』
たったこれだけ。
私からハルへの檄でもあります。
誕生日に裏山で待ってるから早く戦を終わらせろとメッセージを込めています。
「桜の日ってなに?」
「私の誕生日ー。」
「天候の憂いはないって何でそんなん分かるん?」
「勘ですー。」
開けっぱなしにした酒場の扉。
私は指笛を吹く。
“ピー”
このクロの従順さが愛おしいです。
「お嬢まさか鷹使いなん!?」
「シオンに習ったのー。クロって名前だよ。」
私はクロの足にハルへの手紙を巻き付ける。
「アレンデールのお城に届けてくれる?」
「ピー。」
「届けたらすぐに戻って来てほしいの。ごめんね。」
「ピー。」
分かったと言ってくれた…気がした。
再び扉から大空へ飛び立ったクロに手を振って、私は次はシオンへの手紙を書くため机に向かう。
「お嬢。」
「んー?」
カイが私に声を掛ける。
「…正に天職やな。」
「へ?」
「鷹使えるならまたお嬢の仕事の幅が広がるってことや。」
「…え?」
こき使われるような嫌な予感がするのは、話しているカイがすっごく悪い顔で笑っているから。
…怖いんですけど。
「俺も実は出来んねん。」
「そ、そうなんだ。カイは本当に多才だね。」
「ってことで、出張中も依頼することあるかもしれへんからよろしゅうな。」
「え…あー。努力は…します。」
きっと私、馬車馬のように働かされるんだろうな。
そんな未来が容易に想像出来ました。

