(二)この世界ごと愛したい




『天候の憂いはないので準備が整い次第進軍を。終戦後、桜の日にいつもの場所で待ってるね。』



たったこれだけ。


私からハルへの檄でもあります。



誕生日に裏山で待ってるから早く戦を終わらせろとメッセージを込めています。




「桜の日ってなに?」


「私の誕生日ー。」


「天候の憂いはないって何でそんなん分かるん?」


「勘ですー。」



開けっぱなしにした酒場の扉。


私は指笛を吹く。




“ピー”


このクロの従順さが愛おしいです。




「お嬢まさか鷹使いなん!?」


「シオンに習ったのー。クロって名前だよ。」



私はクロの足にハルへの手紙を巻き付ける。




「アレンデールのお城に届けてくれる?」


「ピー。」


「届けたらすぐに戻って来てほしいの。ごめんね。」


「ピー。」



分かったと言ってくれた…気がした。


再び扉から大空へ飛び立ったクロに手を振って、私は次はシオンへの手紙を書くため机に向かう。




「お嬢。」


「んー?」



カイが私に声を掛ける。




「…正に天職やな。」


「へ?」


「鷹使えるならまたお嬢の仕事の幅が広がるってことや。」


「…え?」



こき使われるような嫌な予感がするのは、話しているカイがすっごく悪い顔で笑っているから。



…怖いんですけど。




「俺も実は出来んねん。」


「そ、そうなんだ。カイは本当に多才だね。」


「ってことで、出張中も依頼することあるかもしれへんからよろしゅうな。」


「え…あー。努力は…します。」



きっと私、馬車馬のように働かされるんだろうな。


そんな未来が容易に想像出来ました。