美味しいコーヒーとアップルパイを頂きながら、私はカイが広げた簡易な地図を眺める。
当初の目的である、お金。
つまり私がエゼルタに現れるという情報を売り捌き、一儲けしようと悪巧んでいるカイ。
「…なら、この辺にしよっか。」
頭に入っているトキの部屋の地図。
照らし合わせて一つの街があるだろう場所を指定した私に、カイは驚く。
「馬で移動出来るなら半日あれば充分。情報の信憑性上げるために出来る限り滞在するようにするね。後の儲け話はご自由にー。」
「…怖い怖い怖い。頭ん中全部読まれとるみたい。」
「…あ、それと。おーちゃんじゃない人に送ってもらえると嬉しいな。」
「俺じゃ不服ってことか!?」
ギャンギャンと吠えるおーちゃん。
「そうじゃなくて。昨日の刺客のこともあるし、なんかちょっと…変な気配が多い。おーちゃんは王都を離れちゃダメだよ。」
「気配って…そんなんあるか?」
「明らかな敵意じゃない。でも、気も抜けそうにない感じがする。」
上手くは言えないんだけど、軍人の気配とも違うような。どちらかと言うと皇族っぽい。
「カイが危ない情報でも仕入れちゃったのかな?」
「…敵わんな、お嬢には。」
と言うことは、やっぱり他国の余程核心に迫るような貴重な情報を得てしまったんだろうな。
このお仕事は、危険が付いて回るらしい。
「ほな御者はこっちで手配するし、お言葉に甘えてオウスケは王都に残すわ。」
「うん。それに私のことはあんまり気にしなくていいよー。どうせ私に敵う人なんて早々いないし。」
「万の軍一人で相手出来るんやもんな。噂ではそんなん聞いたけど、いざ本物見たらこんなに可愛えから。つい心配してまうねん。」
…い、嫌な気はしないな。
カイは謎な部分が多いけど、本当に優しい良い人だな。

