(二)この世界ごと愛したい




結局、脈絡のないカイの話はおーちゃんには理解が出来ず。


そしてアップルパイを淡々と作り、丁度焼き上がる頃に私の目が良い香りに釣られて開く。




「んー…。」



薄く目を開くと、隣にミケさん。


気持ちよさそうにゴロゴロしている。



そして天井にあった風船たち。




「え…!?」



風船たちが、床に落下している。


おーちゃんがくれた、大事に大事にしていた私の研究材料。



私は床にぺたんと座り込み、一回り小さくなってしまった風船を集める。悲しすぎる。




「お嬢、朝飯やで。」



ドアの向こうからおーちゃんの声。




「お…ちゃん。」


「ん?起きとるやん…って、何や?どうしたん?」



あまりに悲しみに暮れる私を見て、おーちゃんが心配そうに駆け寄る。




「…風船、元気ない。」


「可愛すぎか!そういうもんや!」


「どうやったら元気になる?」


「無理や!どうにもならん!」



風船は回復しないらしい。


それを聞いて私は更に落ち込む。




「…どうしよう。」


「どうもこうもないねん。はよ下降りて飯食うで。」



座り込んでいる私を立たせようと、おーちゃんが腕を掴んで引っ張る。


けど寝起きなこともあり、こんな悲しい状況で私には力など入りはしない。




「っおい!?」



ぐんっと引かれる力に抵抗も出来ず。


力加減を間違えたおーちゃんに、私は勢い良く飛び込む形になる。




「…ごめ、ん。」


「〜っお嬢大体いつまでそんな格好で…!」