「俺も疲れたからそっち乗ってもいい?」


「え?私はいいけど先導大丈夫?」


「自分等の城に帰るのに迷うことはないでしょ。それに城に帰ったらアキトがうるさいから休んでおこうと思って。」


「アキトがトキにうるさく言えることなんてないと思うけど…。」




トキは本当に荷馬車に乗り移った。


そして楽しそうに笑っている。





「リンも、少しはアキトを見てあげて?」


「え?」


「俺は今からたぶんアキトに怒られるんだよ?」


「はい?」




アキトがトキを?


逆じゃなくて?



と言うか、怒らないで有名らしいと昨夜聞きましたが。でもその後ちゃんと怒ってたか。


だからと言ってトキを怒る勇気があるとは思えない。





「想像出来ない。それに怒られるようなことしちゃったの?」


「しちゃった…というかされちゃった?」




首を傾げる私に、トキが一点を指差す。


その指差す場所は私の腕。





「軽傷でもリンに怪我させたからね。」


「そんなことでアキトが怒るかな?それにトキ何にも悪くないじゃん?」


「まあ感情任せに怒ることはないにしても、内心では怒ると思うよ?」




そういうものだろうか。


でも一番身近なトキが言うんだから、そうなのかもしれないな。






「俺はそんなアキトを大いに楽しむけどね。」




と、結局はアキトを揶揄う気満々のトキ。


…楽しそうで何よりです。





アキトとトキが一緒に過ごすようになった経緯とか、少し気になったりもするけど。いつか聞けるだろうか。




飛んで戦って、飛んで戦って…。


そんなことを繰り返した私を途端に睡魔が襲う。








「リン?」




こつんと。


トキの肩を借りてそのまま寝ました。







「…あーあ。これでまたアキトに怒られるなー。」




そんなトキの楽しそうな声は、私には届かなかった。