(二)この世界ごと愛したい




カイに頼まれかなり渋々。


めちゃくちゃ嫌そうにしながら眠る私を抱き抱えたおーちゃん。




「…は…?」



そんな素っ頓狂な声が出たのは、私の体重に驚いたからだそうで。




「……。(軽すぎひん?あれ?女ってこんな軽いんやったっけ?)」



酒場に入って、上の階に登り部屋のベッドの側まで辿り着いたおーちゃん。


そのまま私をそっと降ろしてくれる。




「…る…?」


「え?」


「るう…?」


「るー?」



最近ではあまりなかった。


眠る私の側に立っている気配に、私は寝惚けたまま手を伸ばす。




「なっ!?!?」



癖とは恐ろしいもので。


その首に腕を回した私は、固まったままのその人を疑問に思い薄く目を開ける。




「…え?」


「は…離せアホっ!!!」



目の前に真っ赤な顔のおーちゃん。




「…ご、ごめっ…」


「お、おおお俺は…心に決めた女がおんねんーっ!!!」



謝り終えるより先に。


なんか叫ばれて私をグイッと無理矢理押し退けて、そのまま逃げるように部屋を飛び出して行ったおーちゃん。




「お、おーちゃ…。」



もう姿はないが弁明したい私。


しかし何せ寝起き無能なもので、頭が上手く回らない。




「…〜っ。」



おーちゃんの赤面が伝染する。


るうと間違えた恥ずかしさと、超至近距離で交わった視線が相まって。





「…あれ。」



私がおーちゃんの首に腕を回したから。


おーちゃんが無理矢理抜け出して行ったから、頭に付けていた将印が転がっているのに気付いた。