「じゃあ今さっき剣を抜かんかったんは?」
「郷に入りては郷に従え。私は自分自身が守るべき対象にはならないし…それに…。」
「それに?」
「…おーちゃんの正義が…ちょっとカッコいいなって、思わんでもないから…。」
これだけの強さの人が。
第一将という肩書きに驕りもせずに。
ただ血を流すまいと敢えて剣を収めるその戦い方が、やっぱり意外と嫌いじゃないから。
「…やっぱ、アホやなあ。」
「っ…。」
おーちゃんが私に見せた初めての笑顔。
それはもの凄い破壊力を纏った、女である私が情けないと感じるほどとんでもなく可愛い笑顔。
「…トキ超えてる。」
「は?」
「私なんて足元にも及ばないな。」
「何やねん?」
自信喪失です。
アキトの城で可愛い可愛いと持て囃されたが、私は声を大にして言ってやりたい。
おーちゃんのほうが圧倒的に可愛い。
「…お家まで送ろうか?」
「お前また俺を子供か何かやと思っとるな!?」
「もう心配すぎて私寝れないかも。」
「ふざけんな!?」
おーちゃんは不貞腐れつつ、また睨む。
何しても可愛く見える。
「本当に送るよ?お家どこ?」
「教えへんわ!」
「…じゃあ絶対気を付けてね?知らない人に着いてっちゃダメだよ?」
「マジで腹立つ!!!」
ぷんぷんと怒りながらおーちゃんは帰って行った。
真剣に心配だった私は、その背中が見えなくなるまで見守って。さらにはレーダーを駆使して危ない人がいないか警戒までしてしまった。
可愛い子には旅をさせろって言うし。
ここはただ、無事を願おうと思う。
それから私は今夜の出来事に色々考えさせられて、その場にごろんと横になる。
「…きれー。」
そのまま夜空を眺めていたら、また眠たくなってきたので。
そりゃあ、寝てしまいますよね。

