(二)この世界ごと愛したい





「じゃあ今さっき剣を抜かんかったんは?」


「郷に入りては郷に従え。私は自分自身が守るべき対象にはならないし…それに…。」


「それに?」




「…おーちゃんの正義が…ちょっとカッコいいなって、思わんでもないから…。」




これだけの強さの人が。


第一将という肩書きに驕りもせずに。



ただ血を流すまいと敢えて剣を収めるその戦い方が、やっぱり意外と嫌いじゃないから。






「…やっぱ、アホやなあ。」


「っ…。」




おーちゃんが私に見せた初めての笑顔。


それはもの凄い破壊力を纏った、女である私が情けないと感じるほどとんでもなく可愛い笑顔。




「…トキ超えてる。」


「は?」


「私なんて足元にも及ばないな。」


「何やねん?」



自信喪失です。


アキトの城で可愛い可愛いと持て囃されたが、私は声を大にして言ってやりたい。



おーちゃんのほうが圧倒的に可愛い。




「…お家まで送ろうか?」


「お前また俺を子供か何かやと思っとるな!?」


「もう心配すぎて私寝れないかも。」


「ふざけんな!?」



おーちゃんは不貞腐れつつ、また睨む。


何しても可愛く見える。




「本当に送るよ?お家どこ?」


「教えへんわ!」


「…じゃあ絶対気を付けてね?知らない人に着いてっちゃダメだよ?」


「マジで腹立つ!!!」



ぷんぷんと怒りながらおーちゃんは帰って行った。


真剣に心配だった私は、その背中が見えなくなるまで見守って。さらにはレーダーを駆使して危ない人がいないか警戒までしてしまった。



可愛い子には旅をさせろって言うし。



ここはただ、無事を願おうと思う。


それから私は今夜の出来事に色々考えさせられて、その場にごろんと横になる。





「…きれー。」



そのまま夜空を眺めていたら、また眠たくなってきたので。



そりゃあ、寝てしまいますよね。