(二)この世界ごと愛したい




素晴らしいことだと思います。


そんな世界になるといいなと素直に思います。




「人を殺すことが正義やと思っとるお前等とは違うねん。」


「…そうだね。」


「お前は一体なんやねん。」



大人しく相槌打ってるだけなのに逆ギレされた。




「だって何も言えることないよ?」


「なんかあるやろ。」


「なんかって…。そもそも私とおーちゃんの正義は違うんだから何言っても無駄じゃない?」


「カイが何でお前を側に置こうとするんか俺には理解出来ん。」



それは私にも分かりませんよ。





「さっきの戦の話で言うとさ。何人殺したかは確かに数えてないけど、戦で一つだけ数えてることはあるよ。」


「討った敵将の数か?」








「…守れなかった人の数だよ。」




それを嘆いて、また剣を取る。


ひたすらそれを繰り返してここまで来ただけ。そうしてたら戦神だと言われただけ。





「都合の良い私の正義は、いつも誰かを守れない。」


「……。」


「だから私はまた戦場に行って。そうならないようにって戦うんだけど、結局同じことを繰り返して…って。今はもう戦はしないけどね?」



おーちゃんは意外そうに驚くけど。


戦神だなんて呼ばれても、本当に私の力なんてそんなものだ。




「人を守るために剣を抜く私と、人を死なせないために剣を抜かないおーちゃんとじゃ、そもそも戦ってる戦場が違うの。」


「…お前やっぱアホやん。」


「あーもうそれでいいよー。」



どっちが正しい正義かなんて、答えはない。


答えのないものに私は興味もない。無駄な議論は時間の無駄だ。