「…カイ?何の話やったん?」
「……。」
「まさかお嬢この国に悪さする気か?」
「…ちゃうわアホ。」
私は別にパルテノンに恨みもないので、何の悪さもしません。
「…もっと恐ろしいこと考えとる。」
「…やっぱ追い出すか。」
「もう無理やで。たぶん逃がさへん。」
「たぶん?」
「…あの子が俺を、もう逃がさへん。」
おーちゃんは私の様子を思い返し、不安を募らせる。
楽しみだと嬉々として笑った私が何が良からぬことをするのではないかと焦る。
「今日の客はおったっけ?」
「やば、忘れとった。よりによってディオンの使者や。オウスケ、お嬢のとこ行って部屋から出んように見張っといてくれ。」
「お、俺が!?部屋から出さんってどうやるん!?」
「…何とか頼むわ。」
カイも私という人間を測り違えた。
測り違えたが故に部屋に留める方法が分からないので、おーちゃんに丸投げ。
そんなおーちゃんは肩を落とす。
「とりあえず早めに帰すようにするわ。」
「絶対やぞ!?」
「分かった分かった。今後の得意先の話もお嬢にしとかなあかんな。」
肩を落としたまま。
おーちゃんは泣く泣く上の階に上がり、私がいる突き当たりの部屋の前で一息吐いて。
「…が、頑張れ俺。」
思い切ってドアをノックする。
しかし応答がないので不思議に思いドアをそっと開けてみる。
カイとおーちゃんの心配を他所に、中にはベッドでミケさんを抱え眠る私がいるだけ。
「っ!?」
おーちゃんは安堵と同時に息を呑む。
「…まるで天使やな。」
ぽつりと呟いたその言葉。
それはたまたま白い服を着た私が、たまたま持ち合わせた金髪で眠っているから。
「…っ!(俺は何を考えてんねん!?)」
我に返って一人静かに悶えながら、私が起きないように気を付けつつ。
ベッドから少し離れた椅子に座る。
そこからはカイに言われた通り、ただ私がこの部屋から出てお客さんと鉢合わせないように見張るだけ。

