「何やお嬢、ビビるなら今のうち辞めるか?」



おーちゃんが嬉しそうに言う。


それをカイが険しい顔で一睨みする。




「お嬢、大丈夫やって。基本オウスケと一緒に動いてもらうし。何かあっても全部オウスケの責任やし。オウスケおらん時は俺の護衛も考えとるけど。」


「は!?初耳やけど!?」


「オウスケ落ち着け。」


「それは俺の負担減るんか!?増えるんか!?てかカイの護衛は俺譲らへんで!?」



揉めている二人は置いといて。


私を金のなる木だと言ったカイが情報を生業にしていると言うのなら、その考えはもう悪魔のような悪知恵。




「俺はおもろそうやからお嬢に守ってもらいたいねん。」


「カイ!ちょっと冷静なれや!」


「俺は冷静やで?」



私がカイに最初に感じた漠然とした恐怖。


それは気のせいではなかった。



カイのこの悪知恵は、たぶん世界を引っ掻き回すことになってしまう。




「…カイってもしかして結構な重役?」


「俺が?何で?」



私でもこんなこと思い付かなかった。



私の名前、私の存在、私の力。


自分でも計り知れない“リン・アレンデール”という情報で、世界を操るつもりだ。





「一国民が考えることじゃないよ。」


「お嬢は察しがええな。俺は別に重役とはちゃうけど、凡その考えは察しの通りやで。」



軍人の私からすれば常軌を逸したその考え。




「…あー。ヤバいかも。」


「お嬢どうした?」



私はもう机に突っ伏す。


これを機にカイの考えに乗っかって今後の私の動き方を考えていく。そしてそれを越えた先を読む。







「…楽しすぎる。」



「「は?」」