私がそんな明るくない話をしたことで。
優しいおーちゃんの眉が下がる。
「…え、ごめん?おーちゃんって感受性豊かすぎない?」
「また俺を子供やって馬鹿にしとるな!?」
「してないよー。ミケさんお散歩付き合ってくれそうにないから、おーちゃんまた双剣教えてよー。」
「は…はあ!?!?」
だって私暇だし。
ミケさんがここにいてほしそうだし。
「だめ?」
「さっき散々やったやろ!?」
「違う違う、もう手合わせはしないよ。カイが心配するし。口頭で聞こうと思っただけー。」
「…口頭?」
頭に疑問符を乗せたおーちゃん。
首を傾げるその姿が、もう愛らしいことこの上ない。
「おーちゃんと違って力が足りないのはもう自覚してるんだけど、その分手数で補えばいいかなって思ったの。だけど最近手数も増やせない相手に負けちゃって…。
改善点とか良い方法があれば教えてほしいなーと。」
私が素直に尋ねると。
おーちゃんは首を傾げたまま固まる。
「…充分強いやんけ。」
「充分じゃないから負けたんですー。」
「誰にも負けへんなんて無理やろ。お嬢は女で、非力は仕方ないやん。」
「…そこに甘んじて何もしなかったら…私は一生認めてもらえない。」
どうせ非力ですよ。
非力は非力なりに頑張るしかないんですよ。頭を使うしかないんですよ。
「お嬢は誰に認めてもらいたいん?」
カイが純粋に疑問に思ったことを私に聞く。
別に隠すことでもないので、私は首に掛け直した将印を指差して答える。
「世界で一番大好きな人。」
私の答えに、不思議そうな顔をする二人。
「天帝とはそんな仲とちゃうんやろ?」
「あ、そっちじゃないです。」
「鬼人の方?え、禁断のやつ?聞いて良かった話か?」
「だって私ハルより好きな人いないもん。」
いないし、出来ないし、欲しくない。
もちろん禁断の恋なんてしてるつもりは毛頭ないんだけれども。
「…お嬢ってもしかして恋愛経験なしか?」
「価値を感じないだけですー。」
「…つまりないんやな。」
「私そんなに暇じゃないんですー。」
「…アレンデールが生み出した天然記念物やな。」

