本当にこの人、根っから優しい人で。


その証拠に可愛い顔が台無しなほど悲しそうにしているおーちゃん。




「…つ、辛かってんな、お前。」


「うん?」


「親父さん殺されただけやなくて、その後結婚までさせられるって…不憫すぎる!」


「あー、うん?」



私からすれば清算済みの過去。


それなのにおーちゃんが謎に悲しんでいるので、もう気にしてないと言える空気でもない。




「セザールの第三王子碌でもないな。どうせブッサイクな顔やろな。」


「…そ、そだね。」



碌でもないのはそのお父さんで。


不細工どころか…って思ったけど。



めんどくさくなったのでもう喋るのやめときます。レン、ごめん。




「凄い人生送ってんな、お前。」


「…その呼び方の方が気になるなー。私名乗ったよね?」


「何やったっけ。」


「リンです。」


「リン?猫みたいな名前やな?」



そうかな!?


ミケさんには負けるよ!?



そして何気に名前忘れられた経験なかったから、私はカルチャーショックです。




「お嬢名前はあかんて。オウスケも違う呼び方にしとき。」


「カイは慎重だねー。」


「今はその名前だけで世界は色を変える時代やからな。」



世界の色…?


私の名前が世界の色を変える…?




「俺もお嬢にするか?」


「それが無難やな。」


「なんかちょっと腹立つな?」


「なんでやねん。」



お嬢お嬢と呟き練習しつつ腹立つと言うおーちゃん。


そして、世界を不思議な角度から見ているんだろうカイ。




「よし、お嬢。」


「はい?」


「辛いやろうけど立ち直って頑張りや。」



私よりも私の過去を気にしてくれているらしいおーちゃん。


そんな可愛いところに何だか笑えてしまう。



おーちゃんが私を信用出来ない気持ちも分かるし。嫌ってそうなのも何となく分かってる。




だけど意外と…。






「私はおーちゃん嫌いじゃないよ。」


「ばっ…な、何やいきなり!?」



真っ赤になって怒ってるのか照れてるのか分からないそんな様子も。


どうしてか嫌いではない。