下の階から殺気を感じる。
様子を見ていなくても、それがおーちゃんのものだと分かってしまう。
…殺気にさえ優しさが入り混じってる。
「癖のある殺気だなー。」
双剣の使い手なだけあって癖が強い。
そしてその殺気が私へのものだと言うことも分かっている。だからこそ、どうしようかと悩む私。
「…パルテノン、か。」
好条件。王都じゃなければ好立地。
宿付き。たぶん飯付き。
もうこんな良い条件の職場には出会えないだろうけど、諦めた方がいいかもしれない。
シオンもうるさいし。
「戦が嫌いな第一将…。」
おーちゃんは弱かったわけじゃない。
寧ろ双剣の腕は本当に凄かったし、双剣の欠点である非力さをカバーする程の力もある。それにまだ全然本気じゃなかったと思う。
だけど、やっぱり…優しすぎる。
どれだけ強くても、可能性を秘めていても、あれでは戦場に立つのはとても辛いと思う。
余計なお世話だろうけど、そんなおーちゃんに胸を痛めていたら。
下からカイの私を呼ぶ声が聞こえて。
…ご飯が出来上がったらしい。
「お嬢お待たせ。」
「良い匂いー。」
朝ご飯食べてなかったので割とお腹空いてました。
ミケさんも既に餌をもらっていて美味しそうに食べている。
「カイはお料理も出来るんだね。」
「惚れたらあかんで?」
「間に合ってるよ。」
「うわ、カッコええ。言うてみたい。」
お料理出来るか出来ないかで選ぶなら、私が惚れるべきは間違いなくるうだ。

