そんな私がいなくなった下の階にて。
「…オウスケ、お前ええ加減にせえよ。」
「俺はあの女をカイに近付けるべきやないと思う。危険すぎる。」
「俺もお前も、あの子のことちゃんと知らなあかんわ。たぶん俺らが思ってるより遥かにええ子やで。」
「それが危険やって言うてんねん。油断してると痛い目見るで。」
「…それに俺はお前にこそ必要やと思う。」
おーちゃんには私が必要だと。
カイがそう言ったことでおーちゃんは徐に嫌そうな顔をする。
「俺はいらん。あんな血の気の多い生意気な女は寧ろ嫌いやし。女はお淑やかが一番や。」
「そんな話ちゃうわ。お前さっき俺が止めへんかったら大人しくあの子に斬られたやろ。」
「…あんな化け物級のスピード攻撃、今避けられへんし。」
「お前の良いとこでもあって悪いとこやで。」
「俺はあんな化け物にはなりたくない。」
私を化け物と言うおーちゃん。
「…とにかくあの子はここにおってもらう。これからの仕事はお前と組ませる。」
「カイっ…俺は…!」
「決定や。」
固く揺るぎもしないカイの言葉に、おーちゃんは押し黙るしかなく。
ただ、拳を握り締める。
「…あんな女、害しかないやん。」
「あの子、ずっと城に閉じ込められて育った子でな。俺はそれを悔やんどった人を知っとる。やからその人のために…って、ちょっと考えた。」
「城に閉じ込められとったって、戦には出とったやん。」
「…何年も閉じ込められて、ようあんだけ真っ直ぐ育ったもんや。」
私が城に閉じ込められていたことを、悔やんでいた人と知り合いだと言うカイ。
そしてそんな私を憐れむ。
「俺は納得出来ん。」
「お前も難儀やな。仕事の話は明日またお嬢も交えて話そか。」
「…カイの決定は絶対やし。俺の意見なんか通らんのは分かっとるし。」
「拗ねんなや。」
スネ夫くん状態になったおーちゃんに、カイが思わず苦笑いしながら注意して。
そのためにおーちゃんはますます機嫌が悪くなる。
「あんな嬉々として戦する奴は嫌いやねん。」
「…知っとる。」
痛いほどに悲しい殺気。
おーちゃんは戦が好きではない将軍だと、私もさっきの打ち合いで気付いてしまった。
おーちゃんの剣は私が今まで剣を交えた中で、一番優しかったから。

