(二)この世界ごと愛したい




「…何で俺が戦に行かへんと思ったん。」


「勘。」


「…あっそ。」



ツンとそっぽ向いたおーちゃん。


その仕草もまた可愛い。




「ほんまに報酬一ヶ月分いらへんの?」


「別にいいよー。その代わり私戦に顔出すからちょっとの間働けないけどね。その分は勝手に差し引いといてー。」


「…戦って、アレンデール戦に手出すん?」


「私が行く戦場はそっちじゃないよ。」



ハルの戦場には行かないって決めてたし。


セザール対ディオン。


アキトたちとお別れして早々だけども、会うつもりはない。



会わないはずだ。


…たぶん。




「やっぱ自分の男が心配なんか。」


「おーちゃんの頭はお花畑で羨ましいー。」


「コイツまじで腹立つ!!!」



アキトが私の男だと信じて疑わないおーちゃん。


そんなアキトのために戦に行くと浅はかな考え方をするおーちゃん。



…これが花畑じゃなくて何処だ。




「ってことはディオンに肩入れするんか?」


「そのつもりー。」


「マジで理解出来んな。結婚せんにしたって将印もらうほどの仲なんやろ?」


「アキトの気持ちには応えられないってちゃんと言ったもん。この先私をどう想うかはアキトの勝手。この先どう動くかは私の勝手。」



アキトに申し訳ないと思ったから、私は将印も丁重にお断りした。


その上でアキトが選択して決めたこと。




「自分を好いた男に次は剣向けるって、とんでもない悪女やん。」


「…アキトはね、きっとそんな私を見て笑うの。」


「はあ?」


「…そういう人だよ。」



問題はアキトじゃないんだ。



恐ろしいのはトキさんなんです。


作戦の一部始終聞いちゃってるし。次会った時どんだけ意地悪されるか分かったもんじゃない。想像もしたくない。




「けど何でディオンにわざわざ手貸すん?」


「理由はこのお金とほぼ同じー。連合軍の借りを返す絶好の機会だからね。」


「何でお嬢はそんなに借り返すの必死なん?」


「…もう質問タイム終了ー。」



もう私ばっかり情報提供してる。


色々聞かれ過ぎて疲れた。気になるのは分かるけど、私にだって断る権利はあるはずだ。