「…何で俺が戦に行かへんと思ったん。」
「勘。」
「…あっそ。」
ツンとそっぽ向いたおーちゃん。
その仕草もまた可愛い。
「ほんまに報酬一ヶ月分いらへんの?」
「別にいいよー。その代わり私戦に顔出すからちょっとの間働けないけどね。その分は勝手に差し引いといてー。」
「…戦って、アレンデール戦に手出すん?」
「私が行く戦場はそっちじゃないよ。」
ハルの戦場には行かないって決めてたし。
セザール対ディオン。
アキトたちとお別れして早々だけども、会うつもりはない。
会わないはずだ。
…たぶん。
「やっぱ自分の男が心配なんか。」
「おーちゃんの頭はお花畑で羨ましいー。」
「コイツまじで腹立つ!!!」
アキトが私の男だと信じて疑わないおーちゃん。
そんなアキトのために戦に行くと浅はかな考え方をするおーちゃん。
…これが花畑じゃなくて何処だ。
「ってことはディオンに肩入れするんか?」
「そのつもりー。」
「マジで理解出来んな。結婚せんにしたって将印もらうほどの仲なんやろ?」
「アキトの気持ちには応えられないってちゃんと言ったもん。この先私をどう想うかはアキトの勝手。この先どう動くかは私の勝手。」
アキトに申し訳ないと思ったから、私は将印も丁重にお断りした。
その上でアキトが選択して決めたこと。
「自分を好いた男に次は剣向けるって、とんでもない悪女やん。」
「…アキトはね、きっとそんな私を見て笑うの。」
「はあ?」
「…そういう人だよ。」
問題はアキトじゃないんだ。
恐ろしいのはトキさんなんです。
作戦の一部始終聞いちゃってるし。次会った時どんだけ意地悪されるか分かったもんじゃない。想像もしたくない。
「けど何でディオンにわざわざ手貸すん?」
「理由はこのお金とほぼ同じー。連合軍の借りを返す絶好の機会だからね。」
「何でお嬢はそんなに借り返すの必死なん?」
「…もう質問タイム終了ー。」
もう私ばっかり情報提供してる。
色々聞かれ過ぎて疲れた。気になるのは分かるけど、私にだって断る権利はあるはずだ。

