(二)この世界ごと愛したい




カイは完全に手を止めて、私の目の前に立つ。




「…俺は今、試されてるんやな?」


「かもね?」


「恐ろしい子やわ。これで俺がお嬢の期待に沿えん答えを出したら見限られるってことやもんな。」


「見限ったりしないけど、その程度かってガッカリはするかもね?」



私はニコニコと笑うだけ。


確かに今カイと駆け引きをしつつ、カイの実力を試している。



エゼルタ王は病に臥せていることは知っている。



その事実を知ることが出来るほどの力を持つ人なのか。そしてそれを私に話せるほど私に信を置けている人なのか。






「…何も知らん。」


「そっか。」



ここまで迷っていると言うことが、何か知っているということ。


そして話さなかったと言うことは、私を決して信用はしていないということ。




「…戦のことだったね。これから二つの大戦が起こるよ。」


「俺喋ってへんのに教えてくれるん?」


「私はエゼルタ王について何か知ってるか知らないかを聞いただけだよ。知らないって回答も答えになってるから別にいいよー。」


「ほんま恐ろしい子やな。」



私の身の振り方を決めるための質問だったから、別にどう答えてくれてもよかった。


私はカイの答えが知りたかっただけ。




「セザールとディオンの戦が先に始まる。その後すぐにアレンデールとソルの戦だよー。」


「アレンデールとソルの戦は最新情報やな。」


「最近決まったからねー。」



あまりにケロッと話した私に、おーちゃんが疑いの目を向ける。




「カイ、デマかもしれへんで。」


「おーちゃん失礼。」


「疑うのが筋や。」


「…それもそうだねー。でもそう言われると私はどうしようもないからこの先は任せるよ。」



信用出来ないのはお互い様。


無論私は、元々あんまり誰かを完全に信じることが出来ないタイプだし慣れてます。