「二人とも中入り。仕事の話するでー。」
「あ、私仕事って言ってもすぐには無理。」
「なんてけったいな新人や。」
「戦が近いからねー。」
私が不意に呟いた言葉に、カイの目が光る。
「お嬢!その話もうちょい詳しく!コーヒーおかわり淹れたる!」
「えー嬉しい!」
再び酒場に入り私はカウンターに座って。
カイはカウンターの中で私とおーちゃんに飲み物を用意してくれている。
「ほんで?戦ってどこ?」
「…なんか目が怖い。」
「怖ない怖ない。俺は優しいで。」
「…これもしかして国的に言っちゃマズいとかある?私勝手に話していいのかな?」
「お嬢は案外警戒心強いねんな。」
カイは意外そうに驚いて。
少し考えてから、私に一つの提案をする。
「俺らはビジネスパートナーやしな。俺の情報とお嬢の情報、交換せーへん?」
「交換?」
「お嬢が知りたいこと何でも一つ教えたる。」
なるほど。
私も気になっていた。私に世界を教えると…そんな大それたことを軽々言って退けたカイの力量。
「…私もカイの知識知りたい。」
「任せんかい。」
「エゼルタ王について、何か知ってる?」
流れるように綺麗な手際で私のコーヒーを準備していたカイの手が、ピタッと止まった。
「もちろん、答えられたらでいいよ。」
「……。」
「…カイって私のこと甘く見てるよね。私は確かに自国のことさえ碌に知らない愚かな姫だったけど。これでも戦場も死線もそれなりに越えて来たよ。
だから一応これくらいの駆け引きは出来るんだよねー。」

