(二)この世界ごと愛したい





「二人とも中入り。仕事の話するでー。」


「あ、私仕事って言ってもすぐには無理。」


「なんてけったいな新人や。」


「戦が近いからねー。」



私が不意に呟いた言葉に、カイの目が光る。




「お嬢!その話もうちょい詳しく!コーヒーおかわり淹れたる!」


「えー嬉しい!」



再び酒場に入り私はカウンターに座って。


カイはカウンターの中で私とおーちゃんに飲み物を用意してくれている。




「ほんで?戦ってどこ?」


「…なんか目が怖い。」


「怖ない怖ない。俺は優しいで。」


「…これもしかして国的に言っちゃマズいとかある?私勝手に話していいのかな?」


「お嬢は案外警戒心強いねんな。」



カイは意外そうに驚いて。


少し考えてから、私に一つの提案をする。




「俺らはビジネスパートナーやしな。俺の情報とお嬢の情報、交換せーへん?」


「交換?」


「お嬢が知りたいこと何でも一つ教えたる。」



なるほど。


私も気になっていた。私に世界を教えると…そんな大それたことを軽々言って退けたカイの力量。




「…私もカイの知識知りたい。」


「任せんかい。」








「エゼルタ王について、何か知ってる?」




流れるように綺麗な手際で私のコーヒーを準備していたカイの手が、ピタッと止まった。





「もちろん、答えられたらでいいよ。」


「……。」


「…カイって私のこと甘く見てるよね。私は確かに自国のことさえ碌に知らない愚かな姫だったけど。これでも戦場も死線もそれなりに越えて来たよ。


だから一応これくらいの駆け引きは出来るんだよねー。」