(二)この世界ごと愛したい




私の周りに双剣の剣士いないし。


手本と言える手本がないので我流を極めるしかなかったけど、おーちゃんの技を盗みたい。




「オウスケ怒りすぎやって。これから二人一緒に動いてもらおう思てるんやから仲良くしてや。」


「何で俺が!?ここはどうすんねん!?」


「今はお嬢が優先。早く仕事覚えてもらってお前も楽なりたいやろ。」


「仕事って…カイ!?本気か!?」



何だか良く分かりませんが。





「おーちゃんおーちゃん。」


「おーちゃん止めろ!?」


「私おーちゃんの双剣見たい。」


「…それ今か!?」



何で私が二人の揉め事を静観して待たなきゃいけないんだ。


今見たい。




「差し支えないなら私お相手してもいい?」


「…カイええの?」


「あかんて。仲良くって言うたとこやろ。」



どうしておーちゃんはわざわざカイにお伺いを立てるんだろう。


考えてみれば酒場の店主のカイより、第一将であるおーちゃんの方が立場的には上ではないんだろうか。




「…カイって謎だね。」


「男はミステリアスな方がええねん。」


「へー。」


「興味なしか。」



興味なしです。


兎にも角にも、おーちゃんは抜刀済みなので私もまずは剣を抜いてみる。




「よし、おーちゃんお外行こうー。」


「…血の気の多い女。」


「勉強熱心だと言ってほしいです。私身近に双剣扱う人いなかったから、ちょっとお手本見たくて。」


「お、お手本!?」



おーちゃんは何故か照れ始める。それもただ可愛いだけです。


カイももう止めるのは諦めたようなので。おーちゃんと一緒にさっきの野原に出てみた。カイも一応着いてきた。




「お願いしますー。」


「手本でも何でも見せたるわ。」



意外と乗り気で有り難いです。


ドンと構えてくれてるので、私が先攻をいただくことにして一太刀打ってみる。




…顔は童顔でもやはり男だ。


軽く受けたその剣も、攻撃に転じて繰り出すその剣も。やはり私とそもそもの腕力が違う。




「へー、やるやん。」


「……。」


「…何の無視なん。」


「…ちょっと集中したいから黙ってて。」



一太刀、一太刀。


その剣の動き、重心位置、身体の使い方…全部全部吸収したい。



全部見たいがために私の攻撃は変調になる。




「おまっ…!?」


「……。」


「おいコラ、性格悪い攻撃すな!?」


「……。」


「聞けボケ!!!」


「あーもううるさい!!!」



全然集中出来ない!!!