(二)この世界ごと愛したい




天帝???


誰???




「…天帝の、女…って何?」


「セザールの第一将。」


「あーアキトのことか…って天帝って何?もしかして異名?アキト天帝なの?似合わないね?」


「将印渡された仲なんやろ?知らんかったん?」



将印の流言とは本当に厄介だ。




「アキトの女…ね。うーん。もう面倒だからそう言うことにしようかなー。」


「…ちゃうん?」


「持ってるのは持ってる。」


「やっぱ天帝の女なんやん。」



なんか気になるのよ!!!


そう言われると反応に困るのよ!!!




「帝に選ばれたのが月姫…かぐや姫って専ら噂やで。」


「アキト何でそんな意味不明なこと言うのー…。」



もう項垂れるしかない私。


未だ剣を抜いたままのオウスケさんには勿論気付いていますが、全くもって殺意がないのでほっといてます。




「なあ、天帝の将印見たい。」


「…カイさんってミーハー?」


「カイでええって。直接見た方が信憑性あるやん。」



私は首に付けていた将印を外して、カイへ差し出す。




「は?」


「あ。」



差し出してから気付いた。



…ハルのと一緒にしてたんだった。





「ビッグニュースやん。」


「…忘れてた。」


「将印二つも持っとる子なんて聞いたことないわ。前代未聞やな。」



それも兄妹間でと。


怪奇な目をカイとオウスケさんから向けられる。けどこれが正しい反応。世間の真っ当な反応だ。



オウスケさんも思わず剣を収めて、その二つの将印を眺めている。




「将印集めとか趣味悪。」


「オウスケさんのはいらないよー。」


「やらんわ。」


「…腹立つなー。」



げんなりと顔を歪めてんのも腹立つ。


私だって好き好んで集めたわけではない。ハルのもアキトのも、それぞれの想いが詰まったそれなりに重みのあるもの。



…無下に何て出来るものではない。




「桜と椿か。」


「カイはお花詳しいの?」


「一般的なのは知っとるだけやで。それにしても、鬼人の方は…ちょっと難儀な話やな。お嬢はこの意味理解してるん?」


「…知らなかったから後から教えてもらった。」



知ったところで私とハルは変わらないし。嬉しい以外の感情湧かないし。