有名人らしいオウスケさん。
階段の陰から現れたその人は…。
「……子供?」
「だっ、誰が子供や!?」
カイさんと同じような話し方をする男の子。
身長も私と大して変わらない。変わらない上にその腰には二本の剣。
だから私はこの人の弟子かと思われたわけか。
「オウスケ、挨拶しとき。」
「…オウスケデス。」
「…リンです。」
「コラお嬢、名前はあかんって言うたやろ。」
挨拶くらい良くない?
「すみません。」
「それにしても珍しい双剣の剣士が二人も揃うこともあるんやな。」
「…私まだ経験浅いです。」
「ほなオウスケが先輩やな。仕事でも先輩やし、これから仲良くな。」
オウスケさんもお仕事するんだね?
私はもう一度、そんなオウスケさんにチラッと視線だけ向ける。
「…え。」
「何?」
頭になんか飾り付けてるオシャレさんだと思ってたけど。
その頭の飾り。
…将印では???
「…最悪。」
「え?どうしたん?」
「こっちの話です。私今日はやっぱりここで失礼しますね。ご馳走様でした。」
一旦、足早にこの酒場を出ようとした私。
僅かにカイさんがオウスケさんに何か目線で合図したのが分かったけど、とにかく今ここを離れて落ち着いて考えたい!!!
「ッあっ…ぶな…!?」
「流石戦神やな。俺の剣躱せる奴なんかそうおらんで。」
オウスケさんが早抜きの剣で、瞬時に私に斬りかかったのをスレスレで躱した。
だけど思わず素の声が漏れてしまった。
「オウスケ手荒にすな。アレンデールの姫やで。」
「元やろ?」
「元でも姫は姫。お嬢に傷なんか付けてみ。すぐに鬼が軍上げて進軍してくるで。」
「そういや鬼人復活したんやったな。」
なんか勝手なことばっかり言ってるけど。
先に礼を欠いたのはそちらなので、ここから私も礼を通すのはもう止めようかな。
ただ、このパルテノンの将印を持つオウスケさんという第一将に私は伝えねばならない…か。
「…オウスケさんちょっと話せる?」
「俺?」
「出来れば場所を移して。」
「…俺あんたタイプとちゃう。」
「私も子供は対象外。」
「やから誰が子供や!?言っとくけどあんたより年上やぞ!?」
うっそだー。
見栄張っちゃってー。
背丈も変わらないし。こんなに童顔な顔立ちで、年上だなんて言われても微笑ましいだけです。

