漠然としてるからはっきりしないけど。
早くここを離れた方がいい気がする。このカイさんって人、何だか少し…怖い。
「…お嬢さん。」
「……。」
カイさんの人を容易く見抜いてしまいそうな、この目が怖い。
「私、これで失礼しますね。ご馳走様でした。」
「…ちょい待ち。」
足早にここを出たいのに。
また私を引き止めるこの人は、一体私をどうしたいんだろうか。
「仕事探しとるって聞いたけど。もし良かったら俺が雇い主になろか?」
「結構です。」
「…お嬢さんにはうってつけの仕事やと思うで?」
「うってつけ?」
何の仕事か知らないんですけど!
それに私王都では働きたくないんですけど!
「俺の仕事は世界を知る仕事。お嬢さんに、俺がこの世界を教えたる。」
「…世界を…知る…。」
それは私の好奇心だったり探究心だったり。
はたまた欲求とも言える。そんな感情に触れるこの言葉は、大きく私を揺さぶる。
「勿論、出来る時だけ働いてくれたらええし。時間もお嬢さんに任せる。都合の良い時に俺の指示を聞いてくれるだけでええ。」
しかも好条件っ!!!
シオンに王都には近付くなって言われたけども。私もこの人完全には信用出来ないけども。
「急に言われても困るわな。」
「…はい。」
「俺のことも信用出来ひんと思うし。」
「…私からも聞いていいですか?」
「ええよ。」
確信はないけど、カイさんがここまでして私を引き止める理由を探してみた結果。
どう考えても答えは一つしかない。
「私のこと、ご存知なんですよね?」
「…ここで嘘ついたら、余計俺のこと信用してくれへんよな。」
「……。」
「…アレンデールの寵姫。無敗の戦神。炎の魔法を使う魔女。最近ではセザール第一将の噂の月姫。」
見事に全部バレてるやーん。
アキトの噂の月姫っていうのだけは腑に落ちませんが。
「…そこまで知ってて何故私を?」
「言い方悪かったら堪忍な。お嬢さんは金のなる木や。事実も既成事実も、その情報価値で大儲け間違いなし。」
「…つまり、私を利用してお金を稼ぎたい…と言うことですか?」
「やからって危ないことはさせへんし、やりたくないことは全然断ってくれてええよ?」

