もう既に街は出てしまって、この人に着いて行ってるだけの私は流石に気付いた。


これ、目的地…完全に王都やーん。




「嬢ちゃん名前は?」


「リンです。」


「名前まで可愛いなんて反則だな!?」



一瞬名乗って良かったのかなって思ったけど全然バレなかった。



私にとっては、このまま王都に入ってしまうことの方が今は問題で。どうしようと焦る。入って猫さん返して速やかに出れば大丈夫か。




「…この猫さん人にあんまり懐かないんですか?」


「そりゃあもう。人間には警戒心しかねえから俺は脱走する度にこうして猫探しの仕事をしてる。」


「猫探しのお仕事で生活出来るんですか?」


「んなわけねえだろ!?猫探しの他にもあるぞ!?」



掛け持ちのお仕事だそうです。


けど私もその仕事のスタイル少し憧れるな。色々やってみたい。そして朝寝坊が許される勤務スタイルが理想。



そんなお兄さんは昨晩も猫さんを探していたそうです。




「お兄さんのお仕事は寝坊オッケーですか?」


「寝坊オッケーな仕事はねえだろ。」


「…ですよね。」


「嬢ちゃん仕事探してんのか?」


「…条件の良い仕事があれば、ですけど。」



初めての仕事にも関わらず好条件を求めている私。偉そうかもしれませんが、これは仕方がない。


追われて追われて、更には均衡を守るため各国を転々とするので働きたい時に働ける…そして寝坊オッケー。そんな夢見たいな雇用形態が理想です。




「この猫の飼い主が俺の雇い主でもあるから、一応口聞いてやろうか?」


「あ、大丈夫ですよ。私王都で働くのは…ちょっと。」


「女の子が双剣持ってる時点でおかしいとは思ったが、やっぱり嬢ちゃん訳アリか?」


「…なので猫さん届けたらすぐに王都を離れます。」



有り難いことにお兄さんは深く聞いてくることはなく。そのまま歩みを進めて王都に到達。


雇い主の元に向かうだけあってお兄さんは慣れた様子で迷うことなく進んでいく。