「…オウスケさんから預かってるのか?」


「…何の話ですか?」


「その猫。」


「あ、オウスケさんが飼い主なんですか?」



もっと早く言ってくれよ!!!


じゃあそのオウスケさんとやらに猫さんを返してもらおうと思い、私は抱えていた猫さんをこの人に差し出す。




「や、やめろっ…その猫は…!!!」


「ニャーッ!!!」



途端、爪を立ててこの人を引っ掻こうとしたので慌てて猫さんを引いた。




「た、助かった…。また顔面削られるところだった。」


「すみません。この猫さん大人しいと思ってたんですけど、そんなことなさそうですね。」


「…嬢ちゃん、可能ならオウスケさんのとこまでその猫連れてきてくれねえか。俺が案内する。」



どうしようかな。


関わりたくはないけど、ここまで猫さんと共に過ごしてしまった以上、きちんと飼い主に送り届ける責任はありそうな気はする。




「もちろん報酬は払う!俺の仕事、頼まれてくれねえか!?」


「…仕事…。」



丁度仕事を探していたこともあり、私はこの男性の仕事をお手伝いすることにした。


猫さんも無事に送り届けたいし。




「ありがとな、嬢ちゃん!」


「とんでもないです。」


「結局オウスケさんの弟子じゃないのか!?」


「…オウスケさん私知らないです。」



どこにいるかも知らないオウスケさんを目指して、移動を始めた私たち。


その道中、男性は私の言葉に目を丸くする。




「オウスケさんを知らないって、嬢ちゃん他国の人か!?」


「…あー。オウスケさんってあのオウスケさんですか。そんな有名な方だと思わなくて…つい。」


「そうだよ!この国にオウスケさんはあの人だけじゃねえか!びびらせんなよ!?」


「失礼しました。あのオウスケさんにこれから会えるだなんて嬉しいです。」



他国の人間だとバレると変に警戒されるかなと案じ、私はオウスケさんを知ってる風を装う。


…全くもって全然知らんけど。